ボツリヌス菌が産生するボツリヌス神経毒素(BoNT)は、重篤な食中毒である食餌性ボツリヌス症を引き起こす。BoNTは無毒タンパク質(NAPs)と複合体を形成し、NAPの機能によって宿主腸管から効率よく吸収される。本複合体はpH 7.0以上の緩衝液中でBoNTとNAPsに解離することから、弱アルカリ性である宿主腸管でも解離すると考えられてきた。 本研究では、宿主腸管に存在する宿主由来因子が、弱アルカリ性環境下で本複合体の解離を阻害することを明らかにした。このことは、宿主腸管内でも本毒素複合体が解離しないことを示唆しており、本研究によってボツリヌス食中毒の発症機構における重要な知見が得られた。
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