• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

Vibrio alginolyticusのコラゲナーゼの産生誘導機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26860290
研究機関岡山大学

研究代表者

美間 健彦  岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80596437)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードVibrio alginolyticus / コラゲナーゼ / 発現誘導 / 発現調節 / 二成分制御系
研究実績の概要

我々は、Vibrio alginolyticus I.029株においてVarS/VarA二成分制御系がコラゲナーゼの産生を制御していることを明らかにした。他の細菌におけるホモログの報告から、VarS/VarA系は、small RNA(sRNA)の発現調節を介して下流の遺伝子発現を制御していると予想された。そこでV. alginolyticus I.029株の染色体DNAのドラフト配列を探索し、sRNAをコードしていると予想される領域を同定した。varS欠失株およびvarA欠失株中でのsRNAの発現量をqRT-PCR法およびnorthern blot法を用いて調べたところ、両欠失株においてsRNAの発現量が親株と比較して大きく低下していた。さらにゲルシフト法によりVarAがsRNAのプロモーター領域に結合することが明らかとなった。以上の結果から、sRNAをコードしていると予想された領域が確かにsRNAとして発現され、その発現がVarS/VarA系によって直接制御されていることが明らかとなった。次にV. alginolyticus I.029株の染色体DNA上のsRNAをコードする領域を欠失させた変異株を構築し、コラゲナーゼの産生を調べた。その結果、sRNA欠失株はvarA欠失株と同様にコラゲナーゼの産生が遅延した。さらにsRNA発現プラスミドを構築しvarS欠失株に導入したところ、varS欠失株が失ったコラゲナーゼの産生が回復した。以上の結果から、VarS/VarA系はsRNAの発現調節を介してコラゲナーゼの発現を制御していることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

これまでにVarS/VarA二成分制御系が発現を直接制御しているsRNAを同定した。さらにVarS/VarA系がそのsRNAの発現調節を介してコラゲナーゼの産生を制御していることも明らかにした。
センサー・キナーゼ遺伝子varSの欠失株はコラゲナーゼ産生能を完全に欠損したが、レスポンス・レギュレーター遺伝子varA欠失株ではコラゲナーゼの産生が遅れるのみであった。このことからVarSが、他の二成分制御系のレスポンス・レギュレーターも介して(cross-talk)、コラゲナーゼの発現を制御していると予想された。そこで大腸菌の二成分制御系の網羅的解析の報告を参考にし、VarSとcross-talkすると予想されたレスポンス・レギュレーターをコードする遺伝子をV. alginolyticus I.029株の染色体DNAのドラフト配列上で探索した。その結果、2つのレスポンス・レギュレーター遺伝子(narPとcusR)が同定された。そこでvarA欠失株の染色体DNA上のnarPまたはcusRをそれぞれ欠失させた二重変異株を構築し、それら変異株のコラゲナーゼ産生能を調べた。その結果、varAとnarPの二重欠失株ではコラゲナーゼ産生能を欠損した。一方varAとcusRの二重欠失株のコラゲナーゼ産生は、親株であるvarA欠失株との間に差は見られなかった。以上の結果から、VarSはVarAとともに、NarQ/NarP二成分制御系のレスポンス・レギュレーターNarPともシグナル伝達を行いコラゲナーゼの産生を調節していることが示唆された。
以上の結果からVarS/VarA系によるコラゲナーゼの発現調節がより複雑な経路を介して行われていることが明らかとなり、その全容の解明に向けて本研究が大きく展開している。

今後の研究の推進方策

これまでの研究の結果、V. alginolyticus I.029株のVarS/VarA二成分制御系がsRNAの発現調節を介してコラゲナーゼの発現を制御していることが明らかとなった。今後は、VarS/VarA系によるsRNAの発現調節がどの様にコラゲナーゼの発現調節に繋がっているのか明らかにする。sRNAは自身にRNA結合タンパク質CsrAを結合することで、CsrAが翻訳をrepressionしているタンパク質のderepressionを起こすことが他の細菌において報告されている。そこで、VarS/VarA系が制御するsRNAも同様の機構で下流のタンパク質の翻訳を制御しているか明らかにする。さらに他の菌においてVarS/VarA系が制御するsRNAが複数存在することが明らかとなっている。そこでV. alginolyticusにおいても、これまでに同定したsRNAとは別のsRNAがコードされているか調べる。
これまでの研究の結果、センサー・キナーゼVarSは、NarQ/NarP系のレスポンス・レギュレーターNarPともシグナル伝達を行うことが予想された。今後は、NarPを精製してin vitroリン酸化実験を行い、実際にVarSとNarPがリン酸基の転移を介したシグナル伝達を行うか明らかにする。さらにリン酸化されることで活性化したNarPがどのようにコラゲナーゼの発現を制御しているかも明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

物品の購入が予定よりも安かったため、次年度の使用とした。

次年度使用額の使用計画

研究が当初の計画以上に進展しているため、次年度使用額を有効に利用して研究を展開する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015 2014

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] The role of small regulatory RNA in collagenase production in Vibrio alginolyticus2015

    • 著者名/発表者名
      Agus Eka Darwinata、後藤和義、美間健彦、山本由弥子、横田憲治、松下治
    • 学会等名
      第88回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      岐阜
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] Growth factor delivery based on substrate-binding domains derived from a clostridial collagenase2015

    • 著者名/発表者名
      松下治、内田健太郎、美間健彦、後藤和義、山本由弥子、横田憲治
    • 学会等名
      第88回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      岐阜
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] Helicobacter pylori抗原刺激による末梢血の免疫関連遺伝子の転写解析と胃がん発症との関係2015

    • 著者名/発表者名
      横田憲治、松下治、山本由弥子、美間健彦、後藤和義、林俊治、平井義一
    • 学会等名
      第88回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      岐阜
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28
  • [学会発表] Vibrio alginolyticusのVarS/VarA二成分制御系のセンサー・キナーゼVarSのリン酸基転移反応に関るアミノ酸残基の同定2014

    • 著者名/発表者名
      前田惠子、美間健彦、後藤和義、山本由弥子、横田憲治、松下治
    • 学会等名
      第67回日本細菌学会中国・四国支部総会
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2014-10-04 – 2014-10-05
  • [学会発表] 院内環境より分離したStaphylococcusの分子疫学2014

    • 著者名/発表者名
      横田憲治、松下治、山本由弥子、美間健彦、後藤和義、渡辺朱理、苔口進
    • 学会等名
      第67回日本細菌学会中国・四国支部総会
    • 発表場所
      徳島
    • 年月日
      2014-10-04 – 2014-10-05

URL: 

公開日: 2016-06-01  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi