研究実績の概要 |
大腸菌をはじめとする多くのグラム陰性菌は外膜小胞(OMV)を産生する。OMVは、内包する様々な細菌由来分子を宿主細胞へ輸送しうることが報告されており、細菌の生存戦略においては、一種の飛び道具となる。しかしながら、詳細なOMV産生メカニズムは未だ解明されていない。 申請者は、フランスでの研究において、腸管外病原性大腸菌の保有する大型の病原プラスミド上にコードされているヘモリジンF遺伝子(HlyF)が、外膜小胞の産生に関与していること、他の細菌にもHlyFホモログが存在すること等を明らかにした。本研究では、上記の先行研究の成果を基に、OMVのワクチンへの応用を念頭において、HlyFによるOMV産生誘導メカニズムの解明、HlyFホモログの機能解析、OMV産生条件の至適化、OMVを介した細菌由来分子の宿主細胞への取り込み経路の解明を試みる。 OMV産生メカニズムについて、HlyFによるLPS(リポ多糖)やペプチドグリカンへの修飾等がOMVの産生誘導に関与している可能性を考え、まず、HlyF導入・非導入株におけるLPSの糖鎖解析を実施した。その結果、LPSのリピドA部分において、両者間で大きな分子質量変化が確認され、OMVの産生誘導に寄与しているものと考えられる。しかしながら、未だ分子質量に変化を及ぼす要因の特定、およびその詳細なメカニズムの解明には至っておらず、今後も継続して解析を進めていく予定である。 なお、これまでの研究成果について、フランスの研究グループとともに米国感染症学会の学術誌であるJournal of Infectious Diseasesに報告した (Murase K, Martin P, Porcheron G, Houle S, Helloin E, Penary M, Nougayrede JP, Dozois CM, Hayashi T, Oswald E. 2015. Hlyf Produced By Extraintestinal Pathogenic Escherichia Coli Is A Virulence Factor That Regulates Outer Membrane Vesicle Biogenesis. J Infect Dis. 213(5):856-865.)。
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