研究課題/領域番号 |
26860296
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
名木 稔 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (60711687)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイトファジー / ATG32 / 鉄欠乏 / オートファジー / Candida / 酵母 / 病原性 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
マイトファジーは、機能が低下して不要になったミトコンドリアを選択的に分解し、ミトコンドリアの機能維持に貢献すると考えられている。 今年度は(1) C. glabrataにおけるマイトファジー活性調節機構、(2)マイトファジーがミトコンドリア機能に及ぼす影響の2点を明らかにすることを目的に研究を行った。 (1)宿主臓器内においてマイトファジー関連遺伝子ATG32の発現量が増加することを既に明らかにしていたため、宿主体内において菌が遭遇しうるストレス条件でスクリーニングを行ったところ、鉄欠乏条件においてマイトファジーが活性化することが明らかとなった。宿主体内、特に血液中ではトランスフェリンなどの鉄キレートタンパク質の働きにより、菌が利用することのできる遊離鉄濃度は非常に低く保たれている。そのため、病原真菌にとって鉄欠乏に適応することは病原性を発揮するために重要であると考えられている。マイトファジーによるミトコンドリア分解が鉄欠乏での生育に何らかの役割を果たしていることが示唆され、C. glabrataの病原性についての新たな知見が得られた。 (2)鉄欠乏条件におけるミトコンドリア機能調節におけるマイトファジーの役割を明らかにするために、ミトコンドリア機能指標であるmitochondrial membrane potential (MMP)、reactive oxygen species(ROS)産生量について、野生株(WT)とATG32遺伝子破壊株(atg32Δ)とで比較を行った。鉄欠乏条件ではMMPがWTと比べてatg32Δで優位に低下していることを明らかにした。また、鉄欠乏条件下でのROS産生量に関してもatg32Δで優位に低下している事が明らかになり、マイトファジーがミトコンドリア機能に何らかの影響を与えている事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した研究計画の平成26年度分の実験は全て終了しており、27年度以降に実施予定だったマウス感染実験についても既に予備実験が終了している。申請を行った時点でマイトファジーの検出方法等についての条件検討が済んでいたことが、スムーズに実験が進行した要因であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、マイトファジーが感染宿主内で起きているのかどうかを、マウス感染実験によって明らかにする。また、野生株とatg32Δ株をマウスに感染させ、臓器定着率を比較することで、病原酵母の病原性におけるマイトファジーの重要性を調べる。マウス感染実験に関しては既に予備実験をしてあり、条件検討を済ませてあるため、スムーズに実験が進行すると考えている。また、株化されたマクロファージ様細胞、Raw264、J774、分化させたTHP-1細胞などを用いて、貪食された状態でのマイトファジー活性と菌の生存率を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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