エボラウイルスの主要標的細胞はマクロファージや樹状細胞であるといわれているが、これらの細胞がエボラウイルス感染の致死的病態にどのような役割をはたしているかは未だ不明である。本課題ではマクロファージや樹状細胞で多く発現しているMicroRNAの相補配列を組み込むことで、マクロファージや樹状細胞特異的に増殖抑制した組換えエボラウイルスを作出して解析した。エボラウイルスおよび遺伝子全長を扱う実験については日本国内では許可されていないため、ウイルスを用いた実験はすべて米国のBSL4施設において実施した。これまでの解析によりターゲットとしたmicroRNAの発現が見られなかったVero細胞、Huh7細胞などでは親株と組換えウイルスの増殖は同程度であったが、microRNAの発現が確認されたマクロファージ由来細胞株やマウスより採取した初代腹腔内マクロファージ細胞において、組換えウイルスの増殖が親株と比較して抑制されていることが確認された。続いてマウス馴化株を用いて組換えウイルスをマウスに実験感染してその生残率を比較した結果、組換えウイルスは親株と比較して病原性が減弱していることが確認された。一方でマウスより採取した初代腹腔内マクロファージ細胞を用いてウイルス感染により誘導される免疫応答に違いがあるか確認したところ、炎症性サイトカインの産生には親株との間で明らかな差はみられなかった。これらの結果より、エボラウイルスの致死的病態発現にはマクロファージ系細胞での増殖が重要である可能性が示唆された。
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