研究課題/領域番号 |
26860298
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 健太 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20466840)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動物モデル |
研究実績の概要 |
ハンタウイルスは、病原性の高い出血熱ウイルスのひとつで、ヒトに腎症候性出血熱 (Hemorrhagic fever with renal syndrome: HFRS) を起こす。その病態には、免疫病原性と血管透過性の亢進が関与すると推定されている。しかし、ヒトの病態を再現する適切な動物モデルがなく、病態との関係は不明であった。研究代表者はこれまでに、HFRS患者と類似の腎臓の出血性病変を発現するマウスモデルを開発し、病態発現にT細胞が関与することを示唆する結果を得た。本研究では、代表的なT細胞サブセットであるCD4陽性T細胞およびCD8陽性T細胞のどちらが病態発現に関与するか検討した。CD4あるいはCD8陽性T細胞に対するラットIgGをそれぞれ正常BALB/cマウスに腹腔内投与することにより、マウス体内でCD4あるいはCD8陽性T細胞を減少させ、感染実験を行った。その結果、CD8陽性T細胞を減少させたときに、発症が抑制された。このことから、CD8陽性T細胞が病態発現に関与することが明らかとなった。次に、血管透過性との関連が深い血管新生関連因子の発現動態を調べた。その結果、Pentraxin-3の増加およびAngiopoietin-1の減少が認められた。これらは患者の臨床検体の解析でも認められることから、本モデルにおいてもヒトと同様の現象が起きていることが示唆された。Angiopoietin-1は、血管透過性亢進作用を持つ血管内皮細胞増殖因子 (Vascular Endothelial Growth Factor: VEGF) の作用を抑制する機能を有する。このことから、Angiopoietin-1の減少によりVEGFの作用が増強され、血管透過性が亢進し、病態発現に至っている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験施設の改修が行われ、ハンタウイルスを用いた実験を実施するために必要なバイオセーフティーレベル3の実験室の稼働、申請に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
多くの実験は並行して実施することができる。遅れを取り戻すため、可能な限り並行して実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設の改修が行われ、ハンタウイルスを用いた実験を実施するために必要なバイオセーフティーレベル3の実験室の稼働、申請に時間を要し、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
同定したT細胞サブセットの分化・機能に関連するサイトカインのうちどのサイトカインが病態発現に重要か調べる実験を平成27年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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