研究課題/領域番号 |
26860305
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
工藤 あゆみ 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30616404)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | HIV / Vpx / H11/HSPB8 / 母子感染 |
研究実績の概要 |
子宮内でのHIV母子垂直感染は胎盤関門が高いHIV感染抵抗性を有することから、妊娠後期まで低く保たれている。予備実験から、胎盤細胞では宿主のVpx阻害因子(あるいは分子機構)が存在し、HIV2感染感受性を制御している可能性が示唆された。ヒト蛋白質リン酸化酵素ライブラリーを用いたスクリーニングの結果、胎盤細胞に高発現するH11がVpxと安定的に結合していた。細胞内にH11蛋白質を強制発現させるとVpx発現量の減少が認められ、この現象はプロテアソーム阻害剤の添加により回復した。胎盤関門において高発現するH11/HSPB8が、Vpx依存的なSAMHD1分解機構にどのような影響を与えるかについて、in vitro, in vivoの両面から分子細胞学的な解析を試みた。H11変異体を用いた解析から、H11依存的なVpx発現量の減少は、H11分子シャペロン活性依存的であることが明らかとなった。H11のリン酸化活性失活型は野生型と同様に細胞内でVpxを分解していた。また、in vitroでのリン酸化試験でもH11依存的なVpxリン酸化は認められなかった。細胞内において、H11がVpxを分解(阻害)することにより、SAMHD1の発現量が回復した。HAタグを付与したH11とFlag-Vpxを共発現させた細胞からFlagビーズによるプルダウンを行ったところ、HA-H11やBag3, HSP70などH11を含む分子シャペロン複合体が共沈していた。これらのことから、H11はVpxを分子シャペロン活性依存的に結合、分解に導いていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題において、当初予定していた研究計画通りに順調に進行しているといえる。細胞内におけるH11依存的なVpx蛋白質分解に係わる分子機構に迫ることができている。また、Vpxは感染細胞内においてE3複合体と結合し、宿主HIV感染阻害的に作用するSAMHD1を分解することが報告されているが、今回着目しているH11高発現によりVpx蛋白質量が減少することに伴い、SAMHD1発現量が回復することが明らかとなった。H11は胎盤に高発現する蛋白質であることから、胎盤における低いHIV感染感受性は、こうした蛋白質群の作用による可能性を示唆している。今後は、H11を含む宿主機能蛋白質群が、Vpxを分解することでHIV感染をどのように制御できるのか、分子細胞生物学的に詳細に検証していく。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、分子細胞生物学的な作用と、HIV感染との両面から解析を行う。Vpx分解に係わるE3リガーゼのスクリーニングから胎盤の合胞体栄養膜細胞に高発現するSMURF2に着目している。SMURF2因子が発現するとVpxが分解されるが、この分子生物学的メカニズムについて、H11と同様にSMURF2の変異体を用いて解析を行う。さらに、H11発現に伴うVpx分解機構にSMURF2発現が関連するのか、あるいは独立した別の経路となるのかをsiRNAを用いて検証を行う。ヒト胎盤培養細胞株を用いてH11やSMURF2の発現量とHIV感染との関連性について、感染感受性とHIV複製を詳細に解析する。今後の実験結果を踏まえ、HIV感染に対する宿主細胞が持つ抵抗性について考察につなげていくものである
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