昨年度までの研究成果から、HIV2感染感受性を制御している可能性のある宿主タンパク質としてH11に着目し解析を進め、H11がVpx(HIV2)のプロテアソーム依存的な分解を促進することが明らかとなった。まず、H11タンパク質発現がHIV感染に与える影響を検証するためPMA処理により分化させたTHP-1マクロファージを用いた感染実験を行った。THP-1/PMA細胞にH11タンパク質を強制発現さるとHIV2野生株の感染が抑制された。一方で、Vpxを欠損しているHIV-2ΔVpx変異株にH11発現は影響しなかった。Vpxは感染細胞においてHIV感染抵抗因子である宿主のSAMHD1タンパク質を分解することが報告されている。そこでH11を強制発現させた感染細胞のSAMHD1発現量を比較したところ、HIV2感染に伴い発現量が低下したSAMHD1タンパク質の発現量は、H11タンパク質の発現に伴い回復していた。このことから、HIV2感染においてH11蛋白質はVpxを分解に導くことで宿主HIV感染抵抗因子であるSAMHD1の発現量を安定させHIV2感染抑制的に作用する因子であることが示された。次に、初代胎盤培養細胞(HVT)を用いてH11の機能解析を行った。HVT細胞ではVpxを発現させてもSAMHD1タンパク質は分解されず、siRNAを用いてH11をノックダウンするとVpx発現によりSAMHD1タンパク質分解が観察された。また、H11をノックダウンした胎盤細胞とコントロール細胞でのHIV2感染価を比較したところ、コントロールと比較してH11をノックダウンした細胞ではHIV2感染の顕著な減少が観察された。これらのことは、胎盤細胞で高発現しているH11タンパク質がVpxタンパク質と相互作用することにより、HIV2感染抑制的に作用していることを示唆した。
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