研究課題
本研究はC 型慢性肝炎におけるインターフェロン (IFN) 治療効果に関与する C 型肝炎ウイルス (HCV) 非構造領域 (NS) 5Aに存在するIFN感受性規定領域 (ISDR) のアミノ酸置換が、HCVのライフサイクルに与える影響及びその作用機序を解析するとともに、どのような機序でIFN感受性を規定しているかについて明らかにすることを目的としている。培養細胞で効率良く複製が可能なHCV株は遺伝子型2aのJFH-1株のみであることから、JFH-1株のNS5Aを、遺伝子型1bであるCon1株由来のNS5Aに置換した組換えウイルス (JFH1/5ACon1) とJFH1/5ACon1株のNS5A内のISDRに7つのアミノ酸置換を持つJFH1/5ACon1/i-7mutを構築した。これらの株のHCV-RNAを細胞に導入した結果、ISDRのアミノ酸置換はHCVの感染性ウイルス粒子産生の効率を低下させた。HCVのウイルス粒子産生には、NS5A及びHCV coreタンパク質の相互作用が重要であると報告されている。そこで、NS5A及びHCV coreタンパク質の相互作用を免疫沈降法と共焦点レーザー顕微鏡を用い検討したところ、ISDRにアミノ酸置換のないウイルスではNS5AとHCV coreが共局在し結合していたのに対し、ISDRにアミノ酸置換のあるウイルスではNS5AとHCV coreの局在は変化し結合も減弱していた。
2: おおむね順調に進展している
ISDRに置換を持つウイルスは感染性ウイルス粒子の産生効率が低下していたが、これはNS5Aとcoreの相互作用が低下する為であることが、明らかとなった。さらに、ISDR置換株を導入した細胞ではIFN添加によるISGsの発現が回復していた。これらの知見は、ISDRのアミノ酸変異によるHCVライフサイクルへの影響及びIFN感受性について説明できるものであり意義深いと考える。本年度の研究により、上記のような新しい知見が得られたことから、研究は順調に進展していると考えた。
これまでに得られた知見から、ISDRのアミノ酸置換により、ISDRが含まれるNS5Aとcoreの相互作用が減弱することで、HCVの感染性ウイルス粒子産生の効率が低下することが明らかとなった。また、ISDRのアミノ酸置換はIFN添加によるISGs誘導に影響を与えることも確認され、Jak-STAT経路への関与が見られた。そこで、今後はISGs誘導に関与するJak-STAT経路関連タンパク質とISDRアミノ酸置換ウイルスの相互作用について詳細に検討を行う。
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