研究課題/領域番号 |
26860309
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
杉山 隆一 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 研究員 (70714476)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | C型肝炎ウイルス / NS5A / インターフェロン / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
本研究はC型慢性肝炎におけるインターフェロン (IFN) 治療効果に関与するC型肝炎ウイルス (HCV) 非構造領域 (NS) 5Aに存在するIFN感受性規定領域 (ISDR) のアミノ酸置換が、HCVのライフサイクルに与える影響及びその作用機序を解析するとともに、どのような機序でIFN感受性を規定しているのかについて明らかにすることを目的としている。 培養細胞で効率よく複製が可能なHCV株は遺伝子型2aのJFH-1株のみであることから、JFH-1株のNS5Aを、遺伝子型1bであるCon1株由来のNS5Aに置換した組換えウイルス (JFH1/5ACon1) とJFH1/5ACon1株のNS5A内のISDRに7つのアミノ酸置換をもつJFH1/5ACon1/i-7mutを構築した。これらの株のHCV-RNAを導入した細胞で、IFN-αの添加によるinterferon stimulated genes (ISGs) 発現を評価した結果、JFH1/5ACon1/i-7mutではIFN-α添加によりISGsの発現が有意に上昇したが、JFH1/5ACon1ではISGsの発現が抑制されていた。 そこで、NS5Aアミノ酸置換によるJak-STAT経路への影響を検討した結果、JFH1/5ACon1/i-7mutではIFN-α添加によりSTAT1リン酸化が亢進したが、JFH1/5ACon1ではSTAT1リン酸化の亢進は起こらなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、ISDRのアミノ酸置換により、ウイルス粒子の生成効率に影響を与えること、更にこの変異株ではIFNによるISGsの誘導抑制効果が減弱していることを明らかにしてきた。一方で、IFNによるISGs誘導が宿主細胞により異なることが明らかとなり、より詳細な検討を行う必要が生じた為。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた知見から、ISDRのアミノ酸置換により、ISDRが含まれるNS5Aとcoreの相互作用が減弱することで、HCVの感染性ウイルス粒子産生効率が低下すること、更にIFN添加によるSTAT1のリン酸化に関与することでISGs誘導に影響を与えることが明らかとなった。しかし、IFNによるISGs誘導が宿主細胞により異なることが明らかとなったことから、今後は複数の培養細胞を用い、詳細な検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではHCVのISDR置換がウイルス粒子の生成効率に影響を与えること、更にこの変異株ではIFNによるISGsの誘導抑制効果が減弱していることを明らかにした。これらの分子機序についても検討していたが、最終年度になりIFNによるISGs誘導が宿主細胞により異なることが判明し、追加実験が必要になった。現在、その結果を含め論文にまとめており、論文投稿が次年度になる為。
|
次年度使用額の使用計画 |
主に分子生物学的試薬や器具、細胞培養や遺伝子導入、ウイルス実験を行う為の試薬や器具などの消耗品を購入する。また、研究成果発表の為の論文投稿費及び学会出張費に使用する。
|