研究課題
2013年3月に中国で確認された鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトへの発症は高い致死性を有し、今後大流行を引き起こす危険性がある。そのため、A(H7N9)インフルエンザの迅速診断系を構築しておくことは、感染拡大を防ぎ適切な治療選択を行う上でも重要である。現在市販されている迅速診断キットではH7等のHA亜型判別まではできず、HA亜型判別を行うためには各亜型特異的な抗体が必要となる。しかしながら、A(H7N9)ウイルスは免疫原性が低いという報告もあり、従来のウイルス抗原を用いた抗体作製法ではH7 HA特異的な抗体が得にくいことが考えられる。そこで、本研究では標的部位特異的なペプチドを用いた抗体作製法を用いることによりH7 HA特異的な抗体を作製し、これを用いた高感度・特異的なA(H7N9)インフルエンザ迅速診断系の構築を行っている。A(H7N9)ウイルスのHAアミノ酸配列の比較を行い、H7 HA特異的で保存性の高い領域を選び出し、且つHA蛋白質の立体構造予測から表面上に位置する部位を選択し、免疫原となるペプチド配列を決定した。この合成したペプチドをマウスに免疫し、そこから作製したハイブリドーマ細胞の培養上清を用いてELISAによる一次スクリーニングを行った結果、H7 HA蛋白質を認識するモノクローナル抗体クローンが得られた。得られた抗体クローンはH7 HA蛋白質を認識し、H1pdm、H3およびH5 HA蛋白質には反応しないことが示された。この中から反応性の高い抗体クローンを選択し、そのハイブリドーマ細胞を用いてマウス腹水作製および抗体精製を行った。得られた精製抗体を標識し、サンドイッチELISA系の構築を試みたところ、H7 HA蛋白質に対して反応性を示す抗体の組み合わせが得られた。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、A(H7N9)ウイルスのHA蛋白質を標的としたモノクローナル抗体の作製および評価を研究計画として挙げていた。選択したHAアミノ酸配列を用いた合成ペプチドを免疫原としてモノクローナル抗体を作製することができ、得られたモノクローナル抗体はH7 HA蛋白質を特異的に認識する抗体となっており、当初の計画通りに進展している。
今後は高感度・特異的なA(H7N9)インフルエンザ迅速診断系を構築するために、得られたH7 HA特異的モノクローナル抗体を用いた迅速診断キットの作製、A(H7N9)ウイルスに対する検出感度の評価、様々なHA亜型ウイルスに対する反応性の評価、臨床検体を用いた評価を実施する。
年度末納品等にかかる支払いが平成27年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成26年度分についてはほぼ使用済みである。
上記のとおり。
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