研究課題/領域番号 |
26860312
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
徳永 優子 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, 研究員 (80555011)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新規肝硬変治療薬候補 / 脱線維化作用 / コラーゲン線維合成系 / コラーゲン線維分解系 / マクロファージ / 好中球 |
研究実績の概要 |
平成26年度は新規肝硬変治療薬候補ICG-001誘導体のコラーゲン線維合成系および分解系を担う分子の発現に与える作用に着目し、脱線維化阻害作用機序の解析を行った。選択的Wnt/beta-catenin/CBPシグナル阻害剤ICG-001誘導体の肝線維症改善作用と機序は、HCV遺伝子型1bスイッチング発現トランスジェニックマウス(HCV遺伝子発現18ヶ月、慢性肝炎・肝線維症を発症)を用いて解析した。ICG-001誘導体の6週間腹腔内投与により、HCV遺伝子型1b長期発現肝線維症モデルマウスの肝臓中コラーゲン量およびコラーゲン線維を減少させることを示した。肝臓中mRNA発現解析の結果、ICG-001誘導体はコラーゲン線維合成系や架橋を担う分子(alpha smooth muscle actin、LOXなど)の発現には影響を与えないことが明らかとなった。一方、コラーゲン分解系を担う分子群の肝臓内mRNA発現解析により、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-8とMMP-9)の発現がICG-001誘導体投与により誘導されることが明らかとなった。これらの主な産生細胞である好中球やマクロファージ数も薬剤投与により増加することを示し、線維分解酵素を産生する細胞群が本薬剤の肝線維症改善作用に寄与することが示唆された。これらの細胞群の性質および増加する機構は明らかでないため、今後は網羅的mRNA発現プロファイルやサイトカイン産生能の変化などの性質を解析し、肝臓に常在するマクロファージもしくは何らかの機構で新たに導員された単球の性質が変化したのかを解明したいと考えている。本研究により、免疫系が複雑に寄与する持続炎症から生じる肝線維症のメカニズムに迫れると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画に示した「1. ICG-001誘導体のコラーゲン線維合成系への作用解析」と「2. ICG-001誘導体のコラーゲン線維分解系への作用解析」を行い、ICG-001誘導体のコラーゲン線維合成系および分解系を担う分子への作用を解析した。その結果、薬剤投与により線維分解酵素マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-8, MMP-9)が誘導されることを見出した。マイクロアレイ等の網羅的手法を用いた肝臓内mRNA発現解析は行っていないため、その他の遺伝子発現に与える影響は解析できていないが、主な脱線維化作用に寄与する分子を同定したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の成果により、ICG-001誘導体がコラーゲン線維分解系に影響を与えて脱線維化作用を示すことが明らかとなった。今後は線維分解酵素を産生すると考えられるマクロファージおよび好中球の機能と誘導機構を解析する予定である。フローサイトメトリーもしくはマイクロアレイ等の手法を利用してどのような機能を持つ細胞群が増加するか絞り込む。特定されたサイトカインや増殖因子を産生する細胞を免疫組織染色法またはin situ hybridization法により同定する。本解析と平成26年度までに同定されたICG-001誘導体により亢進または抑制された候補分子の脱線維化作用へ寄与をHCV誘発性肝線維症モデルマウスを用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度内には、コラーゲン線維合成系と分解系に関与する分子の肝臓内mRNA発現解析により、ICG-001誘導体の脱線維化作用に寄与する候補分子を見出した。そのため、マイクロアレイを用いた網羅的な肝臓内mRNA発現解析を行わず、候補分子に着目した解析を実施した。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の推進方策にて示した通り、網羅的に候補分子を絞り込むためマイクロアレイ解析を実施予定である。
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