研究課題
これまでの研究成果により、ICG-001誘導体はコラーゲン線維分解系に影響を与えて脱線維化作用を示すことが明らかとなった。新規肝硬変治療薬候補ICG-001誘導体の脱線維化作用を担う分子候補マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP-8とMMP-9)を見出し、HCV遺伝子発現により抑制されたMMP活性がICG-001誘導体投与により正常レベルまで回復することを示した。また、ICG-001誘導体投与後に増加した好中球およびマクロファージがMMP-8とMMP-9の主な産生細胞であることを示した。平成28年度は、多項目解析の手法を用いてICG-001誘導体によるサイトカイン産生を比較解析した。選択的Wnt/beta-catenin/CBPシグナル阻害剤ICG-001誘導体の作用と機序はHCV遺伝子型1bスイッチング発現トランスジェニックマウス(HCV遺伝子発現18ヶ月、慢性肝炎・肝線維症を発症)にICG-001誘導体を6週間投与後に採材した検体を用いて解析した。肝臓抽出液を用いた多項目解析(Bio-Plex)の結果、HCV遺伝子発現により増加したInterleukin-1 beta(IL-1 beta)がICG-001誘導体投与により減少することが明らかとなった。IL-1 betaは慢性肝炎の病態に寄与することが知られており、ICG-001誘導体は肝硬変のみならず肝臓の炎症に対しても改善作用を示すと考えた。一方、GM-CSFやM-CSFの産生上昇は認められず、肝臓組織内でのマクロファージ増殖は顕著でないことが示された。MMP産生細胞群の性質および増加する機構を明らかにするため、今後も引き続きケモカイン産生の変化などを解析し、肝臓に常在するマクロファージもしくは何らかの機構で新たに動員された単球の性質が変化したのかを解析したいと考えている。
3: やや遅れている
産前産後の休暇又は育児休業の取得により、十分な研究期間が確保できなかったため。しかしながら、これまでの研究成果を雑誌論文にて発表することが出来たため、(3)とした。
これまでの研究成果により、ICG-001誘導体がコラーゲン線維分解系に影響を与えて脱線維化作用を示すことが明らかとなった。今後は、線維分解系酵素を産生すると考えられるマクロファージおよび好中球の機能と誘導機構を解析する予定である。フローサイトメトリーやケモカインの多項目解析およびマイクロアレイ等の手法を利用して、どのような機能を持つ細胞群が増加するか絞り込む。特定された分子を産生する細胞を免疫組織染色法またはin situ hybridization法により同定する。
平成28年度は、産前産後休暇又は育児休業の取得および研究成果の発表(雑誌論文)により十分な研究期間を確保できなかったため、次年度使用額が生じた。
今後の推進方策にて示した通り、線維分解酵素産生細胞の機能と誘導機構を解析するため、フローサイトメトリーや蛋白質多項目解析およびマイクロアレイ解析を実施予定である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 1-11
10.1038/s41598-017-00282-w.