研究課題
Siglec-7が認識する糖鎖のキャリア分子上のリガンド糖鎖の特異性及びその相互反応に基づく免疫細胞側及び癌細胞側へのシグナルを解析し、免疫監視逃避機構を明らかにするために、以下の検討を行った。組換えタンパク質Siglec-7との結合を誘導するとして同定したシアル酸転移酵素遺伝子cDNAと、Siglec-7のリガンド糖鎖キャリア分子として同定されたタンパク質のcDNAとの共発現により、シアル酸再構成タンパクを作成した。それが内因性のSiglec-7と結合することを確認し、リガンド糖鎖が認識可能な構造に修飾されたことを確認した。現在、翻訳後修飾解析用質量分析計Orbitrap fusionを用い、タンパク質上の糖鎖構造及び修飾アミノ酸残基の解析を行っている。U937Siglec7+とDLD-1及びそのSiglec-7結合トランスフェクタントとの共培養の結果、トランスフェクタントとの共培養でSiglec-7のITIMのチロシンリン酸化の増強が観察された。その結果、リガンド糖鎖がSiglec-7に結合し、免疫細胞側に抑制シグナルが伝わることが示唆された。また、DLD-1及びそのトランソフェクタントに対しSiglec-7-Fcを培養上清に加えたところ細胞の運動能を増強させることが分かった。またその時に種々のシグナル分子の活性化が認められた。このことからSiglec-7がシアル化糖鎖を介して癌細胞に有利なシグナルを伝える可能性が示唆された。この過程へのリガンド糖鎖キャリア分子として同定されたPODXLの関与を明らかにするために、PODXLをノックアウトするためのCRISPER/Cas9 systemを設計中である。以上より、Siglec-7とリガンド糖鎖との相互作用が免疫細胞側へは負のシグナルを、癌細胞側へは有利なシグナルを伝え、癌の宿主免疫機構からの逃避を誘導することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
リガンド糖鎖を中心としたSiglec-7とPODXLの相互作用による免疫細胞側、癌細胞側、双方向におけるシグナル及び表現型を解析し、癌の免疫監視からの逃避機構が示された。また、リガンド糖鎖のキャリアタンパクの精製も完了し、質量分析計による解析もすでに開始しており、おおむね順調であると考えられる。
Siglec-7のリガンド糖鎖の構造解析を質量分析計により解析し、構造決定を行う。また、Biacoreやカロリーメーターなどを用い、同定された糖鎖構造とこれまでに報告されたリガンド糖鎖構造のSiglec-7への分子間相互作用の親和性を測定し、特異性を明らかにする。in vitroで明らかになったNK細胞の細胞障害活性の抑制をin vivoで解析するために、免疫不全マウスへSiglec-7を強制的に発現させたNK細胞を移入した後、DLD-1及びそのトランスフェクタント移植して、その腫瘍形成能を評価し、機能解析を行う。CRISPER/Cas9 を用いPODXLのノックアウトを行い、Siglec-7による癌細胞側への運動能増強シグナルにおける役割の解明を行う。
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The Journal of Neuroscience
巻: 35(6) ページ: 2452-2464
10.1523/JNEUROSCI.4088-14.2015.