研究課題
生体の防御システムである免疫系において、B細胞は抗体を産生し異物を排除する重要な役割を担っている。B細胞が骨髄内で分化する過程では、B前駆細胞がサイトカインIL-7の刺激を受け取ることが重要である。過去の試験管内培養実験による報告では、骨芽細胞由来IL-7がB細胞分化を支持すると推測されている。しかしながら、生体内でB細胞分化を制御するIL-7産生性の骨髄ストローマ細胞は同定されていない。そこで本年度は、種々の骨髄ストローマ細胞特異的にIL-7を欠損させたマウスを作製し、B細胞分化に与える影響を評価した。まず、骨芽細胞のIL-7を欠損させたマウスではB前駆細胞の絶対数に変化が無く、生体内では骨芽細胞由来IL-7はB細胞分化に寄与していないことが判明した。また、血管内皮細胞特異的にIL-7を欠損させたマウスでは、B前駆細胞の減少は部分的であった。一方、CAR細胞のIL-7を欠損させたマウスでは、B前駆細胞が最も顕著に減少しており、末梢組織でも成熟B細胞が有意に減少していることが判明した。以上の結果および昨年度の解析結果から、CAR細胞の約65%は造血幹細胞ニッチとして働くだけでなく、B細胞分化に重要なニッチとしての機能も果たすことが明らかになった。今後は、骨髄内の他のリンパ球に与えるCAR細胞由来IL-7の影響や、骨芽細胞等に由来する低発現量のIL-7の局所機能を解析することで、骨髄微小環境の研究を更に発展させることが出来ると考えられる。
すべて 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (2件)
The Journal of Immunology
巻: 195 ページ: 1804-1814
10.4049/jimmunol.1302456
巻: 195 ページ: 3129-3138
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http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/
http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/ikutalab/ikuta.html