研究課題/領域番号 |
26860324
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 洋平 京都大学, iPS細胞研究所, 研究員 (90623364)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | iPSC / Cytotoxic T cell / フィーダーフリー拡大培養 |
研究実績の概要 |
我々が既に報告したinduced pluripotent stem cell (iPSC)を介したcytotoxic T cell (CTL)の拡大培養法を臨床応用するには(1)動物成分を除き、培養効率を上げるための分化培養系のフィーダーフリー化、(2)再分化CTLにoriginal CTLと同等以上の抗原反応性を付与する分化培養系の開発が不可欠である。 我々は既に従来のフィーダーフリー培養系を改良して再分化CTLを10億倍以上拡大培養することに成功している。再分化CTLは拡大培養後も抗原特異性、サイトカイン産生能、細胞傷害能全てを保持していた。さらにこれらのCTLは免疫監査に必須であるCD62Lの発現も保持しており、従来のprimary CTLの拡大培養にも応用可能である。 再分化CTLの抗原反応性については以前からoriginal CTLに比べ劣っている事が確認されていた。この現象を検討するため再分化CTLの機能、性状解析を行ったところ、我々は再分化CTLが適応免疫系の性質を持つoriginal CTLと異なり、自然免疫系に特徴的なナチュラルキラー活性を持つ事を見いだした。自然免疫系のリンパ球は適応免疫系のものに比べて素早い抗原反応性を示す一方、その反応の強さは一般的に弱い。我々は再分化CTLの弱い抗原反応性は自然免疫系の形質を反映したものと考え、適応免疫系方向へ分化を選択的に誘導する培養系を新たに開発した。改変された培養系で再分化されたCTLは種々のナチュラルキラー細胞マーカーを発現しておらず、従来の再分化CTLに比べて低い抗原提示に対してより高いIL-2産生を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発した再分化法、拡大培養法は再分化CTLのサイトカイン産生能、細胞傷害能、抗原特異性を維持しながら、従来の培養系のものより高い増幅効率をフィーダーフリーで実現している。さらに本研究では自然免疫、獲得免疫という新たな切り口を培養系に持ち込み、より抗原反応性の高いCTLの再分化に成功しつつある。自然免疫系、適応免疫系リンパ球は免疫療法においてそれぞれ一長一短がある。本研究は単一のT細胞クローン、iPSCから獲得免疫系、自然免疫系という二系統のCTLを作製し、互いの短所を補うように使用するという画期的な免疫治療戦略を新たに提示している。
|
今後の研究の推進方策 |
CTLの拡大培養だけでなくCTLの再分化培養もフィーダーフリー化し、再分化CTLのin vivo評価を免疫不全マウスにおいて行う。自然免疫、適応免疫の二系統のリンパ球の性状も機能アッセイ、遺伝子発現の解析などを行ってより詳細に検討する。 CTLに加え、ヘルパーT細胞の再分化法の検討にも取りかかる。本研究で適応免疫系への分化誘導が可能となったので、それを利用してさらなる分化培養系の最適化を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度に多額の費用を必要とする実験計画がある。
|
次年度使用額の使用計画 |
CTL、ヘルパーT細胞の分化培養系の開発とそのin vitro, in vivo機能解析実験(免疫不全マウスの購入等)
|