研究課題
本申請研究では、ADの病態形成や炎症の慢性化にS100A8、S100A9、およびS100A8/A9複合体が重要な役割を果たすという仮説に基づき、テトラサイクリン誘導性S100A8・S100A9トランスジェニックマウスを作製し、前述の仮説の検討を行った。前年度から引き続き遂行しているテトラサイクリン誘導性トランスジェニックマウス(Tg)由来の表皮角化細胞を培養し、テトラサイクリンを試験管内で投与しS100蛋白の誘導を確認したところ、一つのマウス系統で誘導が確認され、このマウス系統に関して過剰発現の誘導方法の検討を行っているところである。S100蛋白の過剰発現が誘導されるマウスが得られれば、そのマウスにマウスアトピー性皮膚炎モデルを適用し、アトピー性皮膚炎におけるS100A8およびS100A9の果たす役割について詳細な検討を行っていく予定である。S100A8およびS100A9のアトピー性皮膚炎における役割を検討するに際し、過剰発現のみならず欠損マウスを用いた検討も必須であると考え、共同研究者よりS100A9欠損マウスを入手し、現在C57BL/6背景にバッククロスを行っているところである。マウスを用いた検討と平行して、S100蛋白がアトピー性皮膚炎においてどの細胞に作用し病態に寄与しうるのかについて検討を行った。我々は、S100A8およびS100A9蛋白の標的細胞として、皮膚での重要な抗原提示細胞である皮膚樹状細胞やマクロファージに注目し、これらの細胞のS100蛋白による炎症性サイトカインの誘導をmRNAレベルで確認した。S100蛋白刺激によりマウス骨髄誘導樹状細胞および腹腔由来マクロファージは炎症性サイトカインを産生した。今後、この炎症の誘導がどの樹状細胞サブセットであるのか、またどういったパスウェイを介して誘導されるのかについて検討を行っていく予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件)
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