研究課題/領域番号 |
26860330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
香山 尚子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40548814)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸管恒常性維持機構の解明 |
研究実績の概要 |
申請者はこれまでに、腸管粘膜固有層特異的に局在するCX3CR1highCD11b+CD11c+ 細胞がエフェクターT細胞の増殖を抑制することにより腸管炎症を抑制することを明らかにし、制御性ミエロイド細胞(Mreg 細胞)と名付けた(Proc Natl Acad Sci USA. 109 (13): 5010-5 (2012))。本申請研究ではIBDの画期的治療薬および治療法の確立に貢献できる基礎基盤の提供を目的とし、CX3CR1high Mreg 細胞の分化機構を明らかにするとともにin vitroにおけるCX3CR1high Mreg 様細胞の分化誘導条件の確立を目指す。申請者は、食餌鉄の欠乏によりCX3CR1high Mreg細胞が減少するとともにDSS腸炎に対する感受性が高まることを明らかにしていた。26年度には、鉄欠乏食投与マウスにコントロール食投与マウスより回収したCX3CR1high Mreg細胞を移入するとDSS腸炎抵抗性を示すことを明らかにした。これにより、鉄イオン依存的なMreg細胞維持機構が腸管免疫系の恒常性維持において重要な役割を果たすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度では、Spi-C欠損マウスの解析および食餌鉄依存的なCX3CR1high Mreg細胞の分化機構解明を行った。Spi-C欠損マウスはそのほとんどが胎生致死のためコンディショナルノックアウトマウスの作成を行った。現在、CD11b-cre; Spi-Cflox/+マウスおよびLys-M-cre; Spi-Cflox/+を得ており27年度中期にはSpi-C欠損マウスの解析を行う予定である。食餌鉄依存的なCX3CR1high Mreg細胞分化機構の解明では、鉄欠乏食投与マウスにコントロール食投与マウスより回収したCX3CR1high Mreg細胞を移入するとDSS腸炎抵抗性を示すことを明らかにし、in vivoにおいて鉄イオン依存的なMreg細胞維持機構が腸管免疫系の恒常性維持において重要な役割を果たすことを示唆する結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、Spi-C欠損マウス(CD11b-cre; Spi-Cflox/flox, Lys-M-cre; Spi-Cflox/flox)の解析を通して腸管恒常性維持機構におけるSpi-C依存的CX3CR1high Mreg細胞の重要性を明らかにする。また、食餌鉄がMreg細胞の分化・生存に関与する際の詳細な分子機構についてSpi-Cの発現制御を中心に解明を試みる。さらに、Spi-C-GFPマウスの解析により、Ly-6Clow単球にSpi-Cが発現することを確認している。これまでの報告により、骨髄Ly-6C+ 単球が腸管CX3CR1+ 細胞に分化することが明らかになっているが、末梢血Ly-6Clow単球に関しては解析が行われていない。本申請研究では、Ly-6C+ 単球から分化したLy-6Clow単球が腸管粘膜固有層においてCX3CR1high Mreg 細胞に分化するかを明らかにする。
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