研究実績の概要 |
平成27年度は、HIV-1の逆転写酵素(RT)領域の128~135番目に位置し、2種類のHLA分子(HLA-B*51:01とB*52:01)に提示されるCTLエピトープ(TAFTIPSI: TI8)に着目した。日本人HIV-1慢性感染者集団のHLA-B*51:01陽性者では、I135T変異(約60%)が優位に検出されるが、B*52:01陽性者では、T、L、V変異が同程度(各約20~30%)に検出される(Yagita et al, J. Virol, 2012)。 そこで、HLA-B*52:01陽性慢性感染者において、変異型エピトープを認識するCTLの存在を検証した。その結果、I135V変異後に、新たにHLA-C*12:02に提示されるエピトープ(TAFTIPSVN: TN9-8V)が創出されることを見出した。日本人集団において、ほとんどのHLA-B*52:01陽性者はC*12:02を有している。V変異型ウイルスを有するHLA-B*52:01-C*12:02陽性慢性感染者8人中6人において、TN9-8V特異的CD8陽性T細胞を検出した。その内3人から分離したT細胞は、V、T、I型ウイルス感染細胞を認識した。また、長期的シークエンス解析が可能であった別の1人において、ウイルスはI→V→M→Lと野生型から種々の変異型に継時的に変化していた。 これらの結果から、HLA-B*52:01-C*12:02陽性慢性感染者において、TI8特異的CTLとTN9-8V特異的CTLが共働し、RT135における変異の多様性に寄与していることが考えられる。 研究期間中に、2種類の変異低蓄積エピトープにおける変異特異的CTLの誘導を明らかにした。変異低蓄積の機序として、同じHLA拘束性の変異特異的CTLが関与する場合と、別のHLA拘束性の変異特異的CTLが関与する場合の少なくとも2種類があることを示した。
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