研究課題/領域番号 |
26860336
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
柏倉 裕志 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40382890)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制御性T細胞 / CD2 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究では、CD2分子の役割に着目し、制御性T細胞(Treg細胞)の生存維持あるいは機能発現維持における遺伝子制御機構を解明すると共に、Treg細胞特異的にCD2分子を欠損したマウスを作製・解析することで、免疫恒常性維持におけるCD2分子の重要性とその役割を明らかにすることを目的とした。今年度は、CD2刺激によるTreg細胞でのマスター制御因子Foxp3の発現解析を中心に検討し、その成果を第43回日本免疫学会学術集会にて報告した。また並行して、CD2コンディショナルKOマウスの作製を検討した。 1.CD2刺激によるTreg細胞でのFoxp3の発現解析 マウスTreg細胞においてCD2分子への単刺激を誘導したところ、CD2刺激はFoxp3発現を増強するだけでなく、TCR刺激に応答するFoxp3発現を相乗的に増強させた。また、CD2刺激を受けたTreg細胞は、免疫抑制活性を保持したまま生存維持することも明らかとなった。さらに、ナイーブT細胞へのCD2刺激とTGF-bにより、免疫制御活性を有する誘導性Treg細胞が誘導されることが明らかとなった。これらの結果により、末梢Treg細胞におけるCD2刺激は、Foxp3発現を誘導あるいは増強し、TCR刺激によるFoxp3発現増強を補完するシグナル、あるいはTCR非依存的なTregの抑制機能を亢進させるシグナルである可能性が見出された。 2. CD2コンディショナルKOマウスの作製 CD2遺伝子ターゲッティングベクターをBALB/c由来ES細胞へ遺伝子導入し、CD2遺伝子組換えES細胞クローンを得ることに成功した。このCD2遺伝子組換えES細胞クローンをインジェクション法によってキメラマウスの産出を検討した。Treg細胞特異的にCD2遺伝子を欠損させたマウスを得るために必要となるFoxp3-Creマウスを購入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度の研究計画では、(1)CD2分子を介したTreg細胞の生存維持機構の遺伝子解析と(2) Treg細胞特異的にCD2遺伝子を欠如させたコンディショナルKO(CKO)マウスの作製を予定していた。 (1)CD2分子を介したTreg細胞の生存維持機構の遺伝子解析 次世代シークエンサーを用いたDNA microarray解析により、ストローマ細胞(Str細胞)との共培養におけるCD2分子を介したTreg細胞の遺伝子解析とCD2リガンド(CD48)によるCD2シグナル導入時のTreg細胞の遺伝子解析を検討する予定であった。しかし、Str細胞との共培養におけるTreg細胞の回収量が極めて少ないため、必要量回収する試薬費用の問題により、検討に至っていない。また、次世代シークエンサーを用いた場合の莫大なランニングコストの問題から、CD48によるCD2シグナル導入時のTreg細胞の遺伝子解析は、細胞サンプルの回収までは検討したが、DNA microarray解析までは至っていない。よって、Foxp3の発現を中心に解析を進め、前項目に記述した成果が得られた。 (2)Treg細胞特異的にCD2遺伝子を欠如させたCKOマウスの作製 CD2遺伝子組換えES細胞クローン(BALB/c)は得られたが、遺伝子組み換えキメラマウス及びCD2遺伝子組換えマウスは得られていない。現在、BALB/c-C57BL/6 F1ハイブリッドES細胞を用いてCD2遺伝子組換えES細胞クローンの作出を検討している。また、ターゲティングベクター上のNeo遺伝子を除くためのFLP遺伝子を発現するトランスジェニックマウスの作製をBALB/c系で検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の計画は、(1)CD2を介したTreg細胞の生存維持機構の遺伝子解析(2)CD2を介したTreg細胞の機能発現維持における特異的遺伝子のエピジェネティック解析(3)Treg細胞特異的にCD2遺伝子を欠如させたコンディショナルKOマウスの作製と解析、の3つの研究の遂行である。 (1)CD2を介したTreg細胞の生存維持機構の遺伝子解析:前述の研究実績から、CD2刺激によるTreg細胞の遺伝子解析を優先して検討する。遺伝子解析法は単検体でDNA microarray解析し、変化のあった遺伝子についてReal-time PCRなどを多検体について比較することとする。Str細胞との共培養におけるTreg細胞の遺伝子解析は、CD2刺激で得られた遺伝子候補についてReal-time PCRなどを多検体について比較する。 (2)CD2を介したTreg細胞の機能発現維持における特異的遺伝子のエピジェネティック解析:申請書の研究計画に準じて遂行する。 (3)Treg細胞特異的にCD2遺伝子を欠如させたコンディショナルKOマウスの作製と解析:キメラマウス作出率で高い成果が得られている別株のES細胞(BALB/c-C57BL/6 F1ハイブリッドES細胞)を用いて遺伝子組み換えクローンの作出を検討する。ターゲティングベクター上のNeo遺伝子を除くためのFLP遺伝子を発現するトランスジェニックマウス(EF-1-FLPマウス)の作製をBALB/c系で検討している。また、Treg細胞特異的にCre遺伝子を発現させたノックインマウス(Foxp3-Creマウス)をBALB/c系統への交雑と戻し交配を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に使用する試薬・機器等については、次年度使用額内で購入すべき試薬・機器等の候補がなかった。また、購入すべきと考えられる試薬・機器等が次年度使用額を越えるため、該当試薬・機器等は次年度に購入することとし、次年度繰越を有効・効率的に活用するため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度で生じた次年度使用額は、全体の1%程度であり研究計画自体を変更すべき事由はないと考える。次年度使用額を効率的に使用し、研究を遂行する。
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