研究実績の概要 |
当該研究者は、高脂肪食負荷に伴い大腸マクロファージによる慢性炎症が生じる事に着目し、インスリン抵抗性発症における役割を明らかにすることを目的に、鍵分子としてマクロファージ誘導ケモカインCcl2, 受容体Ccr2、転写因子Foxo1に着目し解析を行った。 研究計画として、腸管マクロファージを質的・量的に変化させる腸管上皮特異的タモキシフェン誘導型Ccl2欠損マウス、マクロファージ特異的Ccr2欠損マウス、マクロファージ特異的Foxo1活性化マウスを作製した。腸管上皮でCcl2を欠損すると、マクロファージFoxo1の下流遺伝子Ccr2陽性の腸管マクロファージ浸潤が抑制され、バリアタンパクClaudin-1の発現が上昇し、endotoxemiaが是正され、インスリン感受性と耐糖能が改善した。以上より高脂肪食負荷に伴う腸管上皮Ccl2-マクロファージCcr2を介した大腸へのマクロファージ浸潤を抑制する事で、インスリン感受性が改善する事が示唆された。Foxo1活性化モデルのマクロファージ特異的PDK1欠損マウスは通常食下でコントロールと比較して、体重に差はないが耐糖能が有意に悪化した。しかし腸管炎症を示唆する腸管の長さの差は認めず、大腸においてマクロファージ関連遺伝子F4/80, CD68, TNFa, IL1b, Ccr2に関して有意な変化は認めず、腸管においてはマクロファージPDK1欠損によるFoxo1の活性化では、腸炎は惹起しない事が示唆された。一方、T細胞特異的Foxo1-/-Foxo3-/+マウスは高脂肪食負荷下でコントロールと比較し、体重が有意に低下し、耐糖能・インスリン感受性が有意に改善し、パイエル板においてIL4,13の発現が増加しており、腸管T細胞Foxo1/3の活性調節により、腸管免疫に影響を与え、全身の糖代謝を改善させる可能性が示唆され、今後検討を進めていく
|