質量分析において、関節リウマチの患者血清と比較して健常人の群とでは糖鎖のパターンは異なっていた。また、関節リウマチの血清中にはフコシル化されたタンパクが認められた。質量分析をおこなった結果、関節リウマチの治療前後の血清にはフコシル化されたタンパクの割合が減少していた。このことは、当初予測された関節リウマチの疾患に対して何らかの影響がある可能性がある。続いて、実際にフコシル化されることによる影響をin vitroの実験で研究を進めていった。はじめに、細胞におけるフコシル化の抑制による機能の変化を確認するために、フコシル化を抑制する2-dガラクトースを用いて、血管内皮細胞(HUVEC)におけるフコシル化の発現を抑制した。2-dGalによるフコシル化の抑制については、Western blot法を用いて、抑制の効果を確認した。続いて、Matrigelを用いた管腔形成の検討を行ったところ、その機能はは抑制されていることを確認した。さらにHUVECに対して、2d-Galにてフコシル化を抑制した細胞群では、TNF-αによる刺激にて、コントロール群と比較して有意にサイトカイン、ケモカインの産生を抑制していることが示された。このことから、フコシル化はサイトカインやケモカインの産生を介して血管新生に対しても重要な役割を果たしている可能性が示唆された。関節リウマチは様々な病態をていしているものの、血管新生はその中でも中心となる病態の一つである。この結果により、治療のターゲットとしてフコシル化を評価することも期待される。
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