研究課題
我々はこれまでに肺への花粉曝露により誘導されるIgE産生にはMyD88シグナルが必須であり、とくにB細胞特異的なMyD88シグナルが重要であることを見いだしていた。本研究ではIgE産生に必須であるMyD88シグナルを誘導するリガンドの探索を行い、花粉曝露により内因性に産生されるIL-1ファミリーサイトカインが重要であることを明らかにした。ブタクサ花粉にはTLRリガンドが含まれるが、TLR2/4/9三重欠損マウスでは肺へのブタクサ花粉曝露によるIgE/IgG1産生は正常であった。一方で、IL-1RI抗体を投与したマウスならびにIL-18欠損マウスでは肺へのブタクサ花粉曝露によるIgE/IgG1産生が低下していた。さらにB細胞特異的MyD88欠損マウスを作製し、肺へ卵白アルブミンとIL-1α、IL-1βまたはIL-18の投与したところ、B細胞特異的MyD88欠損マウスではIgE/IgG1産生が低下していた。したがって、肺への花粉曝露はIL-1α/βおよびIL-18産生を誘導し、B細胞のMyD88シグナルを活性化することでIgE/IgG1産生を誘導しているであろうと考えられる。一方、気道組織でのTh2細胞の役割を検討するために、DO11.10Tgマウス由来のTh2細胞を移入したマウスにおけるアレルギー性鼻炎モデルを作製した。DO11.10-Th2細胞を移入したマウスに4日連続で卵白アルブミンを経鼻的に曝露したところ、2日目から鼻炎症状(くしゃみ反応)の有為な増加を認めた。おもしろいことにこの反応はIgEシグナルが働かないFceRI欠損マウスやB細胞を持たないμMTマウスでも認められたことから、IgEを含む抗体産生を介さない反応であることが明らかとなった。現在、本反応の詳細な誘導機構についての検討を行っている。
1: 当初の計画以上に進展している
肺への花粉曝露により誘導されるIgE産生に必要なMyD88シグナルを引き起こすリガンドを明らかにし、本研究は論文として発表することができた。加えて、アレルギー性鼻炎におけるTh2細胞の役割を解析するためのモデルマウスを作製し、当初は予想していなかったIgEを介さない鼻炎症状の誘導機構が存在することを見いだした。
気道上皮組織を起点とした抗原曝露によるIgE産生誘導機構には組織特異的なメカニズムが存在すると考えられる。その一つとして、肺や鼻粘膜に存在するB細胞が脾臓等に存在するB細胞とは異なる性質を持っている可能性が考えられる。このことを検討するために、肺、鼻粘膜および所属リンパ節に常在するB細胞と脾臓B細胞でIL-1ファミリーサイトカインに対する反応性に違いがあるかを検討する。さらにより包括的にその性質の違いを検討するためマイクロアレイを用いたそれらB細胞間の遺伝子発現の違いを検討する。DO11.10-Th2細胞移入マウスにおける鼻炎症状誘導機構の詳細を検討する。一般に鼻炎症状の誘導には肥満細胞および肥満細胞から放出されるヒスタミンが必須である。従って、肥満細胞を欠損したマウスおよび抗ヒスタミン薬を用いることで本反応が抑制できるかを検討する。さらに本反応はIgEを介さない反応であることから、その引き金となる物質が何かを検討する。使用している卵白アルブミンにはエンドトキシンが含まれていることからエンドトキシンを介したTLR4-MyD88経路の関与を検討する予定である。
わずかな金額となり、それだけで購入できる試薬等がなかったため。
マウスもしくは試薬購入に使用する。
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