研究課題/領域番号 |
26860344
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
戸田 聡一郎 東北大学, 大学病院, 特任助教 (90619420)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経法学 / 神経精神医学 / 脳神経倫理学 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、神経法学(Neurolaw)の学問領域のうち、とりわけゲノム研究の成果が裁判員の決断におよぼす要因について、基礎固めを行った。その理由としては、ゲノム学は脳神経科学の基礎になる学問領域であり、この点について徹底的に問題点を洗い出すことによって、脳神経学の知見にも正しく意味付けが出来ると考えたからである。本研究を通じて最終的に目指されるのは、特に刑事事件において裁判員が実際の裁判において容易に使用できるワークシート(チェックリスト)の作成である。そのために、今年度は、おもにこの分野の基本的な問題系ーすなわち、モノアミン酸化酵素阻害剤A (MAOA) の遺伝子の有無が焦点となった裁判について、詳細に調べ、この問題群に対する現段階での国際的な裁判員制度の決定の傾向・判決までの論拠の洗い出しを行った。その一方で、統合失調症などの、多因子疾患とゲノム学、およびそれに関連する神経法学(Neuropsychiatry)の現状での議論について、文献調査を行った。そのうえで、直観的に否定できるが論駁しがたい命題「それ(犯罪)を行ったのは私ではなく、私のニューロン群である」の論理的な反駁のための議論構築を試みた。 上述の内容を第27回日本生命倫理学会で行ったが、現段階では、チェックリストの作成までには及んでいない。現在のところ前述の内容を幾つかのトピックに切り分け、論文執筆中であり、法学関連においては今年度の日本法哲学会学術大会で発表し、議論を通じて鋭意論文の執筆を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中に本研究の要であるワークシート(チェックリスト)を作成し、裁判のシナリオを考え、被験者にさまざまな判断を要求し、社会に資する提言をしくてはならないことを考えると、この工程は少なくとも27年度1~3月までに行わなければならなかったであろう。したがって「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上述の「遅れている」要因となっている作業(ワークシートの作成、裁判員としての研究対象者のリクルート、実験の実施、データ解析、論文出版)に集中してとりかかる。(4月~10月) 一部のデータを北米人類遺伝学会(ASHG)にて発表する。(10月) 法哲学会でいただくであろう指摘を精査し、実験データと合わせて整理し、論文執筆にとりかかる。(10月~12月) その他の雑誌にも必要に応じて、得られた知見を投稿する。(1月~2月) 最終取りまとめ(3月)
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでおもに文献調査のみを中心としてきたため、物品費が多くなり、人件費等は予定通リの支出に応じた調査等に行けなかった。今年度はさまざまなかたちで学外の先生方とも協議・議論し、実験も行わなくてはならないため、28年度においても、最終的な結果(であり最も重要な知見)を生み出すために引き続き資金を必要とするため、使用額を申請する所以である。
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次年度使用額の使用計画 |
前述のとおり、おもに東京都を中心とした学外への旅費が多く発生すると思われる。また本学に先生方を招聘して研究会を開き、本研究について議論する機会を設ける。実験におけるリクルートされたさまざまな年齢・職業の方々への謝金、データ解析などに一番多くの予算額を使用する予定である。
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