1990年以降、携帯電話やインターネットに代表されるICTサービスが急速に発達した。その拡充と多様化の一方で、これらを介した倫理観の欠如による問題行為(モラルハザード)が発生している。これらの行為は社会問題になっており、医療職による不適切な行為も発生している。診療上の守秘義務を課せられた医療人にとって、業務上知り得た情報を不特定多数の対象に向けて安易に発信する行為はモラル上の問題だけでなく、法的にも厳しい処分を伴うが、この問題に対して医療人が有効かつ効果的な教育の機会を得ているとは言い難い。そこで、本研究では医学生を含む医療人が起こしうるインターネット・コミュニティ上でのモラルハザード問題の発生に及ぼす要因を明らかにし、医療に関するモラルハザード問題の発生を未然に防止するための教育方略を検討することを目的として開始した。 日本国内において、医学生を含む医療人がインターネットを介して発信した倫理観の欠如によると考えられる問題を、新聞記事データベースおよびインターネット検索エンジンにより抽出した。抽出した事例を引き起こした人の属性、内容、受けた処分、媒介メディア、画像の有無について分類してカテゴリー化し、海外のモラルハザードに報告されていない、悪ふざけによる行為が少なくないことを明らかにした。さらに、これらの事例から、医療人教育に特化したソーシャルメディア利用に関するチェックリストの作成を行い、教育への活用化を検討した。今後は、具体的な教育プログラムを開発し、国内外の医療人への教育活用化を試みる計画である。
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