本研究は、地域における継続的な介護の実現のために、要介護高齢者を家族と地域、および介護保険サービスでいかに支えるかについて、将来を見据えた研究知見を提供することを目的とした。本研究ではまず、国民生活基礎調査を用いて日本の家族介護の変遷を整理し、従来の三世代世帯における家族介護が減少し、未婚の子どもとの世帯や独居・高齢者夫婦世帯が増加するとともに、要介護高齢者を支える世帯が多様化している現状を報告した。さらに、第4期介護保険レセプトデータを用いて、日本の家族介護の変遷、介護保険サービス利用パターンが施設入所に与える影響について解析を行い、利用するサービスの違いによる施設入所への影響を明らかにした。米国のナショナルデータNational Health and Aging Trends Study およびNational Study of Caregiving のデータ解析においては、日本と米国の介護提供形態の違いを検討した。また、家族介護者および要介護高齢者への質問紙及びインタビュー調査の解析から、地域の環境が認知症高齢者の介護にとって重要であること、さらに地域住民とのネットワークが要介護高齢者の災害準備にも有用であることを報告した。 これらの研究知見は、要介護高齢者と家族の実態を記述し将来の介護の行方を見据え、これらを支える公的介護保険サービス、地域との関連を検討したもので、各知見を包括的に検討することで、介護保険、家族、地域の介護における役割を考察した。今後は、本研究知見を発展させ、日米の介護形態の違いが要介護高齢者や介護者の精神的健康に与える影響を検討するとともに、新たな介護者像の介護の状況と介護者の負担感や身体・精神健康への影響について検討を行う予定である。
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