研究課題
本研究は、ハイドロダイナミック法(HGD)を用いた遺伝子治療法を構築するため、申請者らが開発した、新規HGDシステムの安全性、有用性、再現性をイヌを対象として検証することを目的としている。平成27年度の本研究助成基金助成金によって、以下の研究成果が得られた。1.平成27年度はこれまでに有用性を検証、報告した新規HGDシステムと申請者らが開発してきたバルーンカテーテル挿入による肝臓区域特異的なHGDのコンビネーションによる新規遺伝子治療の前臨床試験に向けて、その領域特異的な遺伝子導入の評価による生物学的な安全性の評価を行った。具体的には、遺伝子注入時の肝臓の変化をエコー、腹腔鏡下での肉眼的観察、X線造影による血管の構造の変化の解析などを行い、領域特異性を検証した。さらに、エコー下、腹腔鏡下での肝生検により、遺伝子発現領域を詳細に検証することによって、区域特異的な遺伝子導入と、その発現を、免疫染色、ルシフェラーゼの活性などで確認した。プラスミドの分布を臓器ごとに検証することによって、肝臓特異的な遺伝子導入を長期的に観察し、以上から、新規HGDシステムとカテーテルを用いた、肝区域特異的な遺伝子導入法の区域特異的遺伝子発現の安全性、有効性が示唆された。2.以上の結果に基づき、前臨床研究に向けて、産官学連携によるHGDシステムの改良を重ねており、本年度の成果は新規遺伝子治療法を構築するための安全性の基盤となる、と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
1. 新規HGDシステムと申請者らが開発したバルーンカテーテル挿入による肝臓区域特異的なHGDの特徴である、肝区域特異的な遺伝子導入の検証が可能であった。2. これまでの実績を基盤として、より臨床応用を目指した有効性の評価が可能であった。3. 研究協力者である、Liu教授より、研究の方向性について、適切なアドバイスを得ることが可能であった。以上の点から、現時点で本研究が順調に進展していると評価した。
平成28年度においては平成26、27年度の結果に基づき、上記方法論に基づいてhuman factor IX (hfIX)発現遺伝子を導入し、その長期発現を検証する。具体的には、実験用雑種イヌに対して、最適な時間―内圧曲線で、新規システムを用いてhFIX発現プラスミドを、イヌ肝臓を対象臓器として導入し、長期遺伝子発現効果、再現性、及び安全性を1年間評価する。導入効率、再現性はイヌ血中hfIX濃度を経時的にELISA法により、また組織学的に発現を検証するとともに、治療効果の検証としてヒト血友病の欠乏血漿を用いた凝固活性の推移を評価する。観察期間を通し安全性の評価を行い、長期的な身体への影響も厳重に解析する。なお、プラスミドは研究協力者であるLiu教授より供与される。これらの結果から新規HGDシステムの臨床応用に向けた、長期遺伝子発現効果、安全性が確認され、またヒト血友病に対する遺伝子治療効果が示される。本研究の成果により、個体や対象臓器による遺伝子導入効率の差異を減じ、「誰もが、どのような患者さんにも」再現できる安全な遺伝子治療システムの確立が可能となる。
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