研究課題/領域番号 |
26860358
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
赤石 樹泰 武蔵野大学, 薬学研究所, 講師 (90386384)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 認知症 / J147 / 記憶 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、in vivo実験とin vitro実験による検討を並行して実施し、J147の有効性ならびに作用機序の解明を進めた。 in vivo実験においては、アルツハイマー型認知症モデル動物を用いた検討を行った。認知症モデルマウスにJ147を投与すると、脳内の神経成長因子(NGF)ならびに脳由来神経栄養因子(BDNF)発現の増大が誘導された。さらに、J147は転写因子であるCREBのリン酸化を促進することも確認された。CREBリン酸化の誘導は、BDNF発現を増加させることが報告されているため、J147の抗認知症効果は、CREB-BDNF経路を活性化させることによると考えられた。 また、アルツハイマー病モデル動物では、脳内のミクログリア細胞の過剰活性化や炎症性因子である5-リポキシゲナーゼなどの著しい誘導が認められたが、J147はこのような脳内炎症状態を改善した。 in vitro実験においては、主に培養細胞を用いた検討を行った。J147を神経細胞に適用すると、NGF様およびBDNF様の神経保護効果が認められた。また、J147をミクログリア細胞に適用すると、細胞の過剰な活性化が抑えられ、炎症性物質の分泌を抑制する効果も観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vivoならびにin vitro実験において、アルツハイマー型認知症モデルにおけるJ147の有効性ならびに作用機序の一端が明らかとなった。 記憶形成や神経保護に関わる分子であるNGFやBDNFの発現がJ147によって増大し、その上流の転写因子であるCREBのリン酸化も促進されることが明らかとなった。また、アルツハイマー病の原因や増悪に関わる病態と考えられるミクログリア細胞の過剰活性化をJ147が抑制することが分かった。 今年度の研究により、J147のメカニズムを解明するうえで重要な知見(J147によるCREB-BDNF経路の活性化効果ならびに脳内炎症抑制効果など)が得られつつあるため、「研究は順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で、重要なデータはほとんど揃っているので、早急に論文投稿を進めたい。投稿先の論文査読者から追加実験を求められたら、必要な実験に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究自体はおおむね順調に進んでいたが、研究以外の雑務(薬剤師国家試験対策に関する講義や学生指導など)により、論文の執筆・投稿の段階で僅かに遅れが生じている。 未使用額は、論文の投稿料・掲載料、追加実験に必要な費用として予定していたものであった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、これまでのデータをまとめ論文投稿を進める。研究費は、論文の投稿料・掲載料に用いる。また、査読者から追加実験を求められたら、その実験に必要な試薬・動物代としても用いる予定である。
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