研究課題/領域番号 |
26860359
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
高橋 達雄 北陸大学, 薬学部, 准教授 (50445904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ephrinB2 / 酸性オリゴペプチド / 骨ターゲティング / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
EphrinB2は成熟破骨細胞で発現している膜結合型タンパク質であり、その特異的な受容体は骨芽細胞の膜に存在するEphB4である。EphrinB2の刺激を受けることにより、骨芽細胞の分化・成熟が促進する。本研究は、ephrinB2の骨粗鬆症に対する治療効果を試験するとともに、骨輸送担体として機能する酸性オリゴペプチドをephrinB2に共役させることで、その治療効果の増強を目指す。 EphrinB2及びその酸性オリゴペプチド共役体を作製するため、ephrinB2のmRNAをヒト正常肺組織から抽出し、逆転写反応によりcDNAを得た。EphrinB2の膜貫通領域及び細胞内領域をコードする配列をヒト免疫グロブリンのFc領域をコードするDNAで置換した(ephrinB2-Fc)。さらに、酸性オリゴペプチドとしてアスパラギン酸6個、10個及び14個のホモペプチドをコードするDNA配列をephrinB2-Fc cDNAに付加した。 作製したcDNAを哺乳類細胞でタンパク質として発現させるため、発現ベクターに組み込んだ。発現ベクターに組み込まれたcDNAを哺乳類細胞(CHO-K1細胞)にトランスフェクションすることで、タンパク質として培養上清中に分泌されることが確認できた。培養上清中のephrinB2-Fcとその酸性オリゴペプチド共役体は、疎水性樹脂カラム及びハイドロキシアパタイトカラムを用いたクロマトグラフィーによって精製することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CHO-K1細胞から培養上清中に分泌されたタンパク質を精製する工程において、過去の報告からProtein Gを用いたアフィニティークロマトグラフィーによって純度の高いタンパク質が回収できると予想していた。しかし、回収率が低かったため実用的ではないと判断し、タンパク質の精製に適した樹脂の選択を行うこととした。複数の樹脂を試験した結果、疎水性樹脂とハイドロキシアパタイトの組合せが回収率も高く、充分実用的であるとの結論に至った。上記の樹脂の選別を行うために時間を要したため、研究進行に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
EphrinB2-Fcとその酸性オリゴペプチド共役体の精製法が確立できたため、今後の研究遂行に充分な量(およそ1 mg)のタンパク質を精製する。その後、ephrinB2-Fcとその酸性オリゴペプチド共役体が骨芽細胞分化促進作用を有すること、ならびに骨組織への移行性・蓄積性を明らかにする。 精製したタンパク質の骨芽細胞分化に及ぼす作用をin vitroにおいて次のように確認する。骨芽細胞前駆細胞であるマウス骨髄間質細胞(ST2)、マウス頭蓋冠由来骨芽細胞(MC3T3-E1)、ヒト骨髄間質細胞(HS-5)の骨芽細胞への分化を解析するため、分化マーカーとしてアルカリホスファターゼ活性および石灰化能を測定する。さらに骨芽細胞の分化に関わる転写因子として知られているDlx5、Osx、Runx2、Atf4の発現量をリアルタイムRT-PCR法により測定する。これらの結果をもとにephrinB2-Fcとその酸性オリゴペプチド共役体の骨芽細胞分化促進作用を判定する。 精製したタンパク質の組織分布をマウスを用いて次のように確認する。内因性のephrinB2と投与した精製タンパク質を識別する必要があるため、精製タンパク質を蛍光色素で標識し、マウスへ静脈投与後、経時的に骨を含めた主要臓器を摘出する。固定後、組織切片(骨は未脱灰組織切片)を作製し、共焦点レーザー顕微鏡(現有)にて蛍光を観察することで、ephrinB2-Fcとその酸性オリゴペプチド共役体がどのくらいの期間にわたり骨に蓄積するのかを確認する。
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