研究課題/領域番号 |
26860359
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研究機関 | 北陸大学 |
研究代表者 |
高橋 達雄 北陸大学, 薬学部, 准教授 (50445904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | EphrinB2 / 酸性オリゴペプチド / 骨ターゲティング / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
EphrinB2は骨芽細胞の膜に存在するEphB4と結合することにより、骨芽細胞の分化・成熟を促進させる。本研究は、EphrinB2の骨粗鬆症に対する治療効果を試験するとともに、骨輸送担体として機能する酸性オリゴペプチドをEphrinB2に共役させることで、その治療効果の増強を目指す。 遺伝子工学的手法を用いて作製したEphrinB2-Fc及びその酸性オリゴペプチド共役体(EphrinB2-Fc-D10)をマウスに静脈投与して骨指向性を検証した結果、EphrinB2-Fc-D10はEphrinB2-Fcと比較して高い骨指向性を有することが確認できた。 マウス骨髄細胞初代培養系を用いて、精製したタンパク質の骨芽細胞分化に対する作用を検討した。マウスの骨髄細胞初代培養系にEphrinB2-Fcを添加すると、骨芽細胞の分化マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)の陽性細胞数が増加した。さらにEphrinB2-Fcは骨髄細胞培養初代培養における骨芽細胞分化のマーカー遺伝子(Col1a1、Runx2、Osx、Tnsalp、Osteocalcin)の発現を増加させた。骨芽細胞分化に及ぼす作用はEphrinB2-FcとEphrinB2-Fc-D10との間で差を認めなかったことから、両者はほぼ同程度の骨芽細胞分化促進作用を有することが確認できた。 精製したタンパク質の骨粗鬆症治療効果を検討するため、卵巣切除(OVX)マウスにEphrinB2-Fcを0.3 mg/kgの投与量で2週間に1回投与した。2回目の投与から2週間後にマウスの椎骨を摘出し、未脱灰組織切片を作製して骨量、骨芽細胞数、破骨細胞数の測定を行った。OVXマウスでは正常マウスと比較して骨量と骨芽細胞数の低下が認められたが、EphrinB2-FcをOVXマウスに投与することにより骨量と骨芽細胞数が有意に増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高純度のタンパク質を高収率に精製する工程でやや難航したため、若干の遅れが生じたが、それ以降はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
EphrinB2-Fc-D10はEphrinB2-Fcと比較して高い骨指向性を有し、in vitroにおいてEphrinB2-Fcとほぼ同等の骨芽細胞分化促進作用を有することが明らかとなった。さらに、骨粗鬆症モデルマウスを用いた検討により、EphrinB2-Fcは骨粗鬆症治療効果を有することが明らかとなった。今後はEphrinB2-Fcの骨粗鬆症治療効果に対する用量依存性とEphrinB2-Fc-D10の骨粗鬆症治療効果を検討する。 骨粗鬆症に対する治療効果は、椎骨の未脱灰組織切片を作成して骨量、骨芽細胞数、破骨細胞数などの骨形態計測パラメーターを測定することによって判定する。また、骨形成及び骨吸収の指標として血清中あるいは尿中の骨代謝マーカー(血清骨型アルカリホスファターゼ、血清オステオカルシン、尿中デオキシピリジノリン、血清酒石酸抵抗性酸ホスファターゼ-5b)を測定して薬効の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、事前に動物実験を行うために充分な量のephrinB2-FcとephrinB2-Fc-D10を精製し、平成28年度に骨粗鬆症モデルマウスを用いた治療効果の検証を行う予定であった。しかし、ephrinB2-FcとephrinB2-Fc-D10の精製収率が予測よりも低く、動物実験に必要な量を得るのに予想以上の時間がかかった。そのため、動物実験の実施が予定よりも遅れたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
骨粗鬆症モデルマウスを用いて、EphrinB2-Fcの骨粗鬆症治療効果に対する用量依存性とEphrinB2-Fc-D10の骨粗鬆症治療効果を検討する。
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