EphrinB2は骨芽細胞の細胞膜に発現する受容体(EphB4)に作用して骨形成を促進すると考えられているが、全身投与したEphrinB2によって骨量が増加したという報告は未だなされていない。我々は骨輸送担体として機能する酸性オリゴペプチドをEphrinB2に付加し(AcOP-EphrinB2)、卵巣切除(OVX)マウスを用いて骨粗鬆症の治療効果を検証した。 EphrinB2とAcOP-EphrinB2の骨芽細胞分化に対する作用は、マウス骨髄細胞初代培養系を用いて評価した。OVXマウスに対する治療効果は、EphrinB2もしくはAcOP-EphrinB2(0.1もしくは0.3 mg/kg)を2週間に1回、静脈内投与し、最初の投与から4週間後に脊椎を摘出して骨量を測定することで評価した。 EphrinB2もしくはAcOP-EphrinB2はマウス骨髄細胞初代培養系において、3 μg/mL以上の濃度で骨芽細胞数を増加させた。また、EphrinB2とAcOP-EphrinB2は骨芽細胞分化マーカー遺伝子の発現をほぼ同程度に増加させたことから、EphrinB2とAcOP-EphrinB2はいずれも骨芽細胞の分化促進作用を有することが確認された。OVXマウスは正常マウスと比較して椎体の骨量が顕著に減少したが、EphrinB2(0.1及び0.3 mg/kg)もしくはAcOP-EphrinB2(0.1 mg/kg)の投与によって骨量減少は有意に抑制された。しかし、高用量のAcOP-EphrinB2(0.3 mg/kg)は効果を示さなかった。これらの結果から、EphrinB2は骨芽細胞の分化を促進することによってOVXマウスの骨量減少を抑制したが、AcOP付加によるEphrinB2の骨への集積はその作用を制限し、EphrinB2の方がより強力な骨粗鬆症治療効果を示すと結論付けられた。
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