研究課題
当該年度においては、対象サンプルの収集及びアレル情報を考慮しない形でのレアバリアントとしてのCNV(コピー数変異)データに対するオピオイド感受性との関連解析を行った。サンプル収集に関しては、下顎形成外科手術時にオピオイド鎮痛薬を投与された15-60歳の患者のサンプルが引き続き収集され、当該年度末までに合計約380例以上となった。また、CNV解析においては、前年度と同様に、ゲノム解析用のGenomeStudioを用いて、対象患者355サンプルの全ゲノムジェノタイピングデータを対象として、Call frequency ≧ 0.95、及びCluster sep ≧ 0.1等の条件を満たす一塩基多型(SNP)を対象とし、CNV解析に特化したcnvPartition、及びPLINK Input Report Plug-in等の特殊なソフトウェアを利用して、ゲノム上においてCNV領域の検出を行った。その結果、同定されたのはコピー数が0、1、2、3、4、の領域についてそれぞれ合計399、431、8796、1150、67、の個数であった。一方、オピオイド感受性の指標として、術前のフェンタニル投与前後に冷水誘発疼痛試験を行い疼痛感知潜時(秒)の差としてフェンタニルの鎮痛効果を評価した。同定されたCNVに対して、フェンタニルの鎮痛効果との関連解析を行ったところ、多数の領域がP<0.05の検定結果となり、有意な関連が示されたが、多重検定補正を行った場合にも有意な関連を示す領域は無かった。なお、最も強い関連を示したものは、1番染色体におけるFAM5B及びSEC16Bの遺伝子領域間のCNVであった([CNV保有者における対数変換後表現型平均値] = 27.41、[CNV非保有者における対数変換後表現型平均値] = 2.407;[最低P値] = 0.0006)。
2: おおむね順調に進展している
当該年度の研究において、サンプル収集はほぼ予定通り進行し、アレル情報を考慮しない形でのレアバリアントとしてのCNVデータのみが対象ではあったものの、術前状態でのオピオイド感受性との関連解析を行うことができたため。
今後は、当該年度までの研究において行っていたサンプル収集を引き続き行う。また、下顎形成外科手術時にオピオイド鎮痛薬を投与された15-60歳の患者のサンプル中のオピオイド高感受性またはオピオイド低感受性であることが示唆されるサンプルに関する全ゲノムジェノタイピングデータを用い、オピオイド感受性に関連するCNVを同定する。さらに、アレル情報を考慮する形でのcommonバリアントとしてのCNVデータに対するオピオイド感受性との関連解析(個別多型・ハプロタイプ等)を行う。比較的頻度の高いCNVに対しては、commonな一塩基多型などの場合と同様に、鎮痛薬・疼痛感受性の指標となる臨床データを用いて関連解析を行う。これらの解析において有意な関連が見出されたCNVに関しては、文献検索及びリアルタイム定量PCR(qPCR)による追加解析等を含めた詳細な検討を行い、最有力候補構造多型・変異(最もcausativeと考えられるCNV及びその遺伝子)を同定する。
基本的には当初の研究期間内に全額を使用すべく計画的に執行したが、年度末近くになっても実験が引き続いており、本年度達成できなかった実験及び解析を次年度に行うこととなった。
物品費(実験用試薬及びプラスチック製品等)、旅費(研究成果発表目的の国内外旅費及び研究打合せ目的の出張費等)、その他等(印刷費及び研究成果発表費用(論文校閲・別刷費用)等)に対して使用予定である。
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