研究課題
多発性骨髄腫では化学療法後の完全奏功の判定が困難であり、微小残存病変をとらえる有用な手法の開発が求められている。本研究の目的は、多発性骨髄腫に特異的に発現する血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRα)転写産物を同定し、より高感度かつ普遍的に微小残存病変の補足を試みることである。平成26年度に複数の多発性骨髄腫細胞株から、既知のPDGFRα遺伝子のintron 1領域内に存在するPDGFRαの5つの新しいfirst exonを含む、様々な転写産物の構造を見出した。しかしその構造多様性から、転写産物を対象とした解析が非常に困難であったため、平成27年度は翻訳産物を対象とした解析を行った。複数の転写産物に共通していると思われる部分をエピトープとする抗PDGFRα抗体を用い、western blotを行った。その結果、全長のPDGFRαタンパク質よりも小さい分子量の、正常細胞株と比して多発性骨髄腫細胞株にのみ検出されるバンドを見出した。このバンドはいくつかの急性骨髄性白血病細胞株でも検出された。この結果から、PDGFRα遺伝子の異常な翻訳産物の存在が示唆された。そこでMS解析により目的のバンドがPDGFRα遺伝子由来の翻訳産物であるか確認するため、免疫沈降法により目的のバンドの濃縮を試みた。しかし、全長のPDGFRαタンパク質が免疫沈降される条件下で、目的のバンドを濃縮することができなかった。
3: やや遅れている
研究代表者は平成28年9月より所属研究機関を変更した。そのため新しい環境下で研究を遂行するためのセットアップに時間がかかり、補助事業期間を延長した。
これまでの研究結果から、転写産物、翻訳産物いずれからのアプローチにおいても今後の研究展開に困難が予想される。一方、PDGFRα遺伝子の新規first exonの発見は、PDGFRα遺伝子の生体内での機能を解明する上で非常に有用であると考えられる。PDGFRαノックアウトマウスは胎生致死であることから、発生期における機能の重要性が指摘されているものの、機能解析が進められない状態である。そこで、各first exonを特異的にノックアウトすれば全PDGFRα遺伝子を欠損しないので、胎生致死を引き起こさずに発生期におけるPDGFRα遺伝子の機能が解明できると期待される。そのため平成28年度は、ヒトで見出したPDGFRα遺伝子の新規first exonがマウスにも存在するかをまず検討する。マウスでも存在する場合は、発生期におけるそれぞれの発現部位、時期特異性についてin situ hybridization法を用いて検討を行う。
研究代表者が平成27年9月より所属研究機関を変更したため、新たな環境で研究を行うためのセットアップに時間がかかり次年度使用額が生じた。なお、補助期間延長申請を行い、承認を受けている。
「今後の研究の推進方策」記載の計画に則って、生じた遅れを取り戻すべく、精力的に研究を行っていく。
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