研究課題/領域番号 |
26860362
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
加藤 優子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 助教 (50580875)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自己抗体 |
研究実績の概要 |
膠原病患者が肺動脈性肺高血圧症(PAH)を発症すると、予後は極めて不良となる。しかし、PAHの発症を予測しうるバイオマーカーは存在しない。近年、膠原病患者血清中から自己抗体「抗PDGFレセプター抗体」が発見された。PDGFレセプターの作用から、この抗体がPAH発症と関連することが推察されるが、まだ検討はなされていない。 そこで本研究では、ヒト肺動脈平滑筋細胞を用いて、膠原病患者血清中の抗PDGFレセプター抗体の存在の確認と、PAH発症に対する役割の解明をおこなうことで、抗PDGFレセプター抗体が膠原病におけるPAH発症の予測マーカーとなりうるかを検討することを目的とし、研究を開始した。 26年度は、まず、ヒト肺動脈平滑筋細胞を用いて、肺高血圧発症に重要である、増殖能、遊走能、浸潤能に及ぼす自己抗体の影響を検討した。その結果、抗PDGF抗体の存在が疑われる膠原病患者血清中のIgGが、ヒト肺動脈平滑筋細胞の増殖能および遊走能を有意に増加させることを見い出した。その成果は、第9回日本臨床検査学教育学会学術大会にて報告し、研究協力者は学生優秀発表賞を受賞した。さらに、ヒト肺動脈平滑筋細胞の増殖能および遊走能を促進するメカニズムを明らかにするため、これらの制御に関わる細胞内カルシウム濃度の変動ついての検討をおこなっており、現在も検討中である。 また、質量分析法を用いて、新たな自己抗体のターゲットを検索し、新たな肺高血圧症に関与する自己抗体の検索も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度に実施を予定していた「膠原病患者血清からのポリクローナルIgGの精製」「肺動脈平滑筋細胞を用いたIgG刺激による増殖能および遊走能の測定」「PDGFレセプター阻害剤を用いた増殖能および遊走能の測定」に関しては、学会にて中間報告がおこなえたうえ、次年度に予定していた細胞内カルシウム濃度の検討も始めることができた。しかし、症例数が予定より集まっておらず、今後も追加実験の必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
PDGFレセプターを介した細胞の増殖・遊走には細胞内カルシウム濃度の上昇が重要である(Hainaud P et al. Atherosclerosis、2001; Mancini GB et al.Prog Cardiovasc Dis、2002)。そこで、26年度に抗PDGFレセプター抗体の存在が疑われたIgGの刺激により肺動脈平滑筋細胞内のカルシウム濃度が上昇するか確認する。 また、PDGFレセプターの下流でカルシウムを介した増殖・遊走に関わる分子(PLCγ、IP3など)の活性化を、分子生化学的・病理学的手法で検出し、IgG刺激により細胞増殖・遊走を促進する分子メカニズムを明らかにする。 さらに、質量分析法により発見した、新たな自己抗体のターゲットに関して、ヒト外動脈平滑筋細胞における働きを検討し、肺高血圧発症との関連を模索する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入したい物品が、残金より高額であったため、次年度交付金と合わせて購入する必要があるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度交付金と合わせて、試薬を購入する
|