研究課題
赤血球不規則抗体は、遅発性溶血性輸血副作用(Delated hemolytic transfusion reaction:DHTR)を引き起こす。このDHTRは、死に至る重篤な反応も報告されている。安全な輸血療法を患者に提供する上で、不規則抗体の情報および溶血性疾患の交絡因子の研究は輸血療法において大きな課題となっている。現在、不規則抗体研究はretrospectiveな多施設共同研究が実施されているが、retrospectiveではDHTRの発生率の正確な把握、予知や予防法を確立することが難しい。そこで、DHTRのprospectiveな多施設共同研究で発生する問題点の抽出と解決方法について、大学IRB(15-140)の承認を得た後、pilot研究を実施した。2017年3月まで331名から「本研究に参加するための承諾」を取得し、257名(実施率78%)から赤血球不規則抗体検査を実施した。陽転化は4名(3.3%)、内訳は抗E抗体、抗Jka抗体、抗C抗体、抗Lea抗体が各1例検出された。性別は3例が女性、妊娠歴は2例、他1例は今回初出産であった。今後のpilot研究の課題は、不規則抗体の陽転化率を算出する際の母集団を見直す。理由とし、これまでの不規則抗体の陽転化率の母集団は、不規則抗体検査を実施した全患者としていた。しかし、同種不規則抗体を産生する条件は、①特定の赤血球抗原(例:E抗原)陰性の患者に、②特定の赤血球抗原(E抗原)陽性のRBCを輸血した場合となる。このため、各赤血球抗原が陰性の患者に、対応する赤血球抗原が陽性のRBCを輸血した群を母集団とし、不規則抗体産生の有無を追跡調査する。追跡すべき母集団を限定することにより、各不規則抗体の真の陽転化率が明らかとなる。母集団の見直し後、不規則抗体調査研究グループより参加施設を募集し、多施設共同研究のpilot研究を実施する。
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