研究課題/領域番号 |
26860371
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
八木 美佳子 九州大学, 大学病院, 研究員 (70536135)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / C1qbp / 白質脳症 / メタボローム解析 |
研究実績の概要 |
先天性大脳白質形成不全症は、脳の白質の発達不全が原因で起こる神経変性疾患である。特徴として生後早期の発達遅滞と眼振、および痙性麻痺が言われている。診断には、MRIなどの画像検査や遺伝子解析が重要であるが、検査をしても原因がはっきり分からず、確定診断に至らない患者も多くいる。発症の病因としては神経細胞伝導路のアクソンの周囲の髄鞘化が正常に起こらないことが原因であると考えられている。つまり、髄鞘に必要なミエリンの構成成分の異常や、髄鞘化に必要な因子の障害が考えられている。代表的な疾患であるミトコンドリア白質脳症病は、ミトコンドリアHSP60の異常で起こるといわれている。しかし、その殆どについて神経変性の原因遺伝子、発症機序、診断マーカーは不明である。したがって、先天性大脳白質形成不全症疾患モデルマウスでの解析が強く求められている。 研究代表者は、ミトコンドリア局在タンパク質であるC1qbpを神経系組織のみで特異的に欠損したマウスを独自に作製し、このC1qbp神経KOマウスは表現型、病理所見からヒトにおける大脳白質脳症の疾患モデルマウスになると考えられた。本研究は、C1qbp神経KOマウスを用いてC1qbpの機能解析を通じて大脳白質脳症発症機構の分子基盤の解明、およびメタボローム解析による新規診断マーカーの探索を目的とした。研究計画は以下の通りである。 1. C1qbp神経KOマウスの形態、行動解析、病態解析を行う。2. C1qBP 神経特異的マウスのミエリン形成能の低下の分子基盤を明らかにする。3. C1qbpと結合する分子の同定、その機能解析を通じて、C1qbpの分子機序を明らかにする。4. KO細胞、脳初代培養細胞を用いて、C1qbpの機能解析、病態解析を行う。5. メタボローム解析: 診断ツールとしてのメタボローム解析を行う。C1qbpノックアウト細胞とC1qbp神経KOマウス大脳、血液における代謝物の変化を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. C1qbp神経KOマウスの脳形態観察、行動解析、病態解析、は全て確認できた。白質脳症病であることが示唆された。2. C1qBP 神経特異的マウスのミエリン形成能の低下の分子基盤は現在解析中である。ミエリンを構成する脂肪酸の合成能は減少していることはわかった。3. C1qbpと結合する分子の同定を行い、C1qbpは尿素回路にも影響を及ぼすことを発見した。その機序に関しては現在解析中である。4. C1qbp神経KOマウスの脳初代培養細胞の単離、培養の系を立ち上げた。5. 脳組織のメタボローム解析を行い、現在マーカーとなる代謝物を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
脳組織での解析はほぼ終了したので、さらに詳細な分子基盤を明らかにするため、培養細胞の系を確立する予定である。 空胞形成、スポンジ様変性は神経軸索の変性なのか、オリゴデンドロサイトの異常による脱髄が原因なのか、アストロサイトに異常はないのか、探るため、胎仔脳より神経細胞の初代培養を行う。具体的には、それぞれの細胞を単離し、形態観察、ミトコンドリアの活性測定、RNA発現量の変化などを確認する。さらに、神経細胞、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、のメタボローム解析を行い、変化が認められた代謝物に対して診断検査マーカーとなりうるのか、検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は既に研究室に揃っている物を用いて実験を行ったため、物品費が予想以下であった。毎年参加する学会の開催が福岡市であったため、旅費もかからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、新たな系を立ち上げるために物品費がかなり必要となる。脳初代培養細胞を3種類、分離培養する予定である。さらに3種類の細胞のメタボローム解析も行う予定である。そのため、請求額は全て使用する。
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