研究課題
細胞のエネルギー代謝の中心であるミトコンドリアはATP産生、TCAサイクル、脂肪酸酸化など多彩な機能を持つ。ミトコンドリア機能異常は、神経変性疾患、心筋症、糖尿病などを引き起こすことが知られている。ミトコンドリア異常による疾患の詳細なメカニズムや診断マーカーなどは現在のところ明らかではない。ミトコンドリア病患者において変異が同定されたp32/C1qbpはミトコンドリアに局在し、RNAやタンパク質のシャペロンとしての機能を有することを我々は見出してきた。このp32脳神経特異的ノックアウトマウスを作製すると、その表現型より大脳白質脳症疾患モデルマウスとなりうると考えた。そこで本研究は、p32ノックアウトマウスの機能解析を通じて、大脳白質脳症発症機構の分子基盤の解明、およびメタボローム解析による新規診断マーカーの検索を目的とした。研究実績は以下の通りである。(1)病理解析より大脳白質部位に典型的な空砲形成および脱髄を示した。(2)その原因を初代培養細胞を用いて解析し、オリゴデンドロサイトの分化異常、神経軸索の維持機能消失、であることを突き止めた。(3)p32脳神経特異的ノックアウトマウスの脳組織では、ERストレス応答を惹起すること、mTOR系のシグナル伝達阻害、脂肪酸酸化異常、尿素回路の異常を示した。これらの異常が大脳白質脳症を呈する原因だと考えられる。(4)p32脳神経特異的ノックアウトマウスの大脳白質から抽出した代謝物に対して質量分析器による網羅的解析を行い、p32を介した代謝物シグナリング経路を同定した。その結果p32が脳神経では、乳酸、ケトン体である3-hydroxybutyrate、尿素回路に関与することを明らかにした。以上の結果より我々が作製したp32神経特異的ノックアウトマウスが大脳白質脳症疾患モデルマウスとして疾病診断マーカー検索に有意義であることを示唆している。
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Oncotarget
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Journal of Dermatological Science
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