研究課題/領域番号 |
26860372
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
田崎 雅義 熊本大学, その他の研究科, 助教 (50613402)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アミロイドーシス / 組織診断 / プロテオミクス / 質量分析装置 |
研究実績の概要 |
アミロイドーシスとは、難溶性のアミロイドと呼ばれる線維が諸臓器に沈着することによって引き起こされる難治性の疾患群である。本疾患群は、組織に沈着する原因蛋白質の種類ごとに各疾患に分類され、疾患によって治療法が大きく異なる。そのため、アミロイド沈着組織から正確に原因蛋白質を同定することが重要である。 本研究では、アミロイドに特異性の高いホルマリン固定組織切片からの蛋白質抽出法を開発し、質量分析装置を用いた正確な病理組織診断法を確立することを目的とする。 研究計画2年目である平成27年度は、前年度に開発したプロテイナーゼKを用いた手法のアミロイド抽出法としての有用性を検証するために、各種アミロイドーシス患者 (AL, FAP, SSA, AA) 組織を用いて多数例での検討を実施した。その結果、いずれのタイプのアミロイドにおいてもプロテイナーゼKで処理することで、有意にアミロイド原因蛋白質の検出される割合が増加した。そのメカニズムを明らかにするために、アミロイド沈着領域にプロテイナーゼKで処理したところ、アミロイドがその酵素消化に抵抗性を示すことがわかった。更に検討を進める中で、質量分析装置を用いた解析技術によって、FAP疑いの患者から原因蛋白質の同定に至り、英文として報告した。また、原因蛋白質不明であったアミロイドーシス患者の組織から、開発した本解析法を用いることで、新たなアミロイド原因蛋白質の候補を明らかにした。 ALアミロイドーシスの予後予測マーカーの探索および病態解析を行うために、更に症例を追加し検討した。その結果、免疫グロブリンL鎖のIGLC3ペプチドの検出率が最も高いことが明らかとなった。さらに、検出ペプチドと沈着臓器には明らかな特異性はないものの、消化管および心臓でL鎖λタイプが多いことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展状況は、当初の予定通り順調である。アミロイドに特異性の高い質量分析装置を用いた診断法を開発するために、各種抽出法を検討した結果、プロテイナーゼKを用いたアミロイド抽出法を考案し、その有用性を検証した。本年度は、各種アミロイドーシス患者 (AL, FAP, SSA, AAなど) 組織を用いて多数例での解析を実施し、プロテイナーゼK処理が有意にアミロイド原因蛋白質の検出される割合を増加させることを明らかにした。さらに、そのメカニズムも明らかにしつつある。また、本手法を用いることで、これまで原因蛋白質不明のアミロイドーシスから新規アミロイド原因蛋白質の候補を同定した。 ALアミロイドーシスにおけるバイオマーカーの開発および病態解析に関して、患者や臓器によって検出されるペプチドにバリエーションがあることがわかった。同時に、IGLC3が最も検出率が高いことが明らかとなった。さらに、予後不良の患者で、IGLC2が検出されることもわかってきた。 以上のように、アミロイドに特異性の高い質量分析装置を用いた診断法の確立および、その技術を利用した新たなアミロイド原因蛋白質の同定、さらには、ALアミロイドーシスのバイオマーカーの確立および病態解明の準備が整ってきた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究計画の最終年度であるため、前年度の研究を更に発展させると同時に、欧文原著にまとめる。プロテイナーゼKを用いたアミロイド抽出法の開発研究に関して、本法の新規診断法としての有用性をさらに検証するために、症例数を増やし、免疫組織化学染色(従来法)との一致率を評価する。また、本解析法を用いて同定した新規蛋白質が新たなアミロイド原因蛋白質であるか質量分析装置およびその他の生化学的手法を用いて検証する。 ALアミロイドーシスのバイオマーカーの探索および病態解析に関して、更に症例を増やし、臨床情報と検出ペプチドの関係性を検証する。さらに、検出されたL鎖由来ペプチドのアミロイド形成能についても評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった物品の購入を次年度としたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
アミロイド沈着組織切片から蛋白質を抽出し解析するために必要な質量分析関連消耗品(チップ、カラム、レーザーマイクロダイセクション用スライドなど)を購入する。組織でアミロイド原因蛋白質を同定するのに用いる、免疫組織化学染色用各種抗体を購入する。研究成果を発表するための国内旅費に使用する。当初の研究計画に従って、研究費を用いる。
|