研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植患者に特有の合併症である移植片対宿主病(GVHD)は移植片の宿主に対する免疫反応であるが、特異的な客観的マーカーは見出されていない。近年、話題を集めている血清miRNAによる検討は、臨床所見および病理所見が診断特異的ではないGVHDにおける非侵襲的なバイオマーカーになる。本研究ではGVHD発症前後の患者の血清を用いて、GVHD発症に関わる血清miRNAの発現プロファイルを解析し、GVHDの発症予測、治療効果判定や重症度判定への臨床応用、さらには、miRNAの観点から移植免疫の病態に迫ることが目的である。 初年度に同種移植後のGVHD発症および非発症患者の血漿を用いたexosomal miRNAの発現プロファイリングにより、非GVHD群と比較してlate on set GVHD群で有意に低下するexosomal miRNAを見出した。本年度はそれらの候補exosomal miRNAから有意差の高かった2つのmiRNA (miR-AおよびmiR-B)の解析を引き続き行った。miRNAターゲット予測データベース miRTarBaseによりmiR-Aのターゲット遺伝子にERBB2, KLF13, CBFBが、miR-Bのターゲット遺伝子にDCX,RELN , BMI1, FBXW7が含まれていた。さらに、これらのターゲット候補遺伝子情報を元にパスウェイ解析データベース The Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery (DAVID)を用いたバイオインフォマティクス解析により、miR-AおよびmiR-Bがinflammation, T-cell activation, Immune system, nucleotide-bindingのパスウェイに関与していることが示唆された。
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