研究課題
同種造血幹細胞移植患者に特有の合併症である移植片対宿主病(GVHD)は移植片の宿主に対する免疫反応であるが、特異的な客観的マーカーは見出されていない。近年、話題を集めている血清miRNAによる検討は、臨床所見および病理所見が診断特異的ではないGVHDにおける非侵襲的なバイオマーカーになる。初年度(H26年度)および次年度(H27年度)では、同種移植後のGVHD発症および非発症患者の血漿および血漿内に遊離する細胞外小胞(エクソソーム)分画を用いて、late on set aGVHDの発症に関与するエクソソーム内miRNAの発現プロファイルを解析した。非GVHD群と比較して、late on set GVHD群で優位に低下するエクソソーム内miRNAを検討した結果、miR-128を含むいくつかのmiRNAが候補として抽出された。最終年度であるH28年度は、抽出された候補miRNAの機能解析および、GVHD発症メカニズムの解明を目的として、急性GVHDモデルマウスの作製とそれらを用いたin vivo解析を予定していたが、研究期間内においてin vivoモデルを確立することが不可能であった。その一方で、臨床検体を用いた解析をさらに進行させる方向へと重点を移し、GVHD発症前後での継時的なサンプリングを行い、GVHD発症に関わるmiRNAの候補として抽出されたmiR-128についてQRT-PCRを用いて発現を解析した結果、GVHD発症の数週間前からエクソソーム内miR-128の発現が患者血漿中で上昇していることを見出した(未発表)。また、miR-128の他にも候補となるmiRNAが数種類抽出されており、本研究期間が終了した現在もmiR-128の解析と並行して解析を進めており、雑誌論文への投稿も準備中である。当初の計画には解析予定の臨床検体数に到達することができなかったが、GVHD発症に関わるmiRNAの同定に成功し、GVHDの発症予測、治療効果判定や重症度判定への臨床応用、さらにはmiRNAの観点から移植免疫の病態に迫るための礎となると考えられる。
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Rinsho Ketsueki.
巻: 58(4) ページ: 298-302
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