体外・体内診断薬として有用な機能をもつ抗体を得るために、天然の抗体分子を遺伝子操作により改変する抗体工学が革新的な方法論として期待されてきた。本法は、膨大な多様性をもつ変異抗体フラグメントの分子集団をファージ提示し、そのファージライブラリーからごく希少な改良分子種を識別する。しかし、実際には目的抗原を高い水準で認識する変異抗体の取得は困難であることが多く、新しい手法の開発が待たれる。申請者はマウスモノクローナル抗ファージ抗体を作製し、その可変部をリンカーで連結した一本鎖Fvフラグメント(scFv)を調製し、抗原特異的なscFv提示ファージの検出を試みた。まず、ファージ粒子のみを検出する条件をELISAで検討した結果、エタノールを含む緩衝液でファージを希釈したときに感度良く測定が可能であった。本条件で抗ファージscFvを認識する蛍光標識抗体を用いて共焦点レーザー顕微鏡による蛍光観察を行ったところ、ファージと推定されるサイズの蛍光像が得られた。続いて、scFv提示ファージを同様に観察しscFvの蛍光検出を調べた。scFvの検出には申請者が調製したビオチン標識マウスモノクローナル抗イディオタイプ抗体を用いて蛍光標識アビジンで染色したが明瞭な画像が得られなかった。本申請研究ではファージの蛍光検出を利用したフローサイトメーターでの選別を予定していたが、蛍光では感度が不十分であることが研究途中で判明し、より高感度な検出が可能とされる発光タンパク質(Gaussia Luciferase)を抗ファージscFvと連結させた融合タンパク質として調製した。本融合タンパク質を用いるELISAではscFv単独での検出よりも高感度化に成功しており、超高親和力変異抗体フラグメントの単離に応用が可能と期待される。
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