研究課題
中枢神経系における遺伝子レベルでの痒みの研究は、数個の遺伝子が同定されているだけで、この分野の研究は初期段階であると言える。そこでこれまで進めてきた痛みの伝達ペプチドの研究より、サブスタンスP(SP)とアミノ酸配列の類似するヘモキニン-1(HK-1)が、HK-1が痒み伝達に寄与するペプチドである可能性が高まってきた。しかし、これまので研究はin vivo系により得られた結果であることから、in vitro系でのより詳細な解析をすすめることで、HK-1が痒み伝達ペプチドであることを明らかにすることが期待できる。具体的には、HK-1あるいはSPをそれぞれHK-1特異的な受容体を一過性に発現させた細胞へ添加し、細胞への神経ペプチドを添加することにより生じる細胞内のカルシウムイオンの濃度が変動を指標に解析した。また、細胞内のカルシウムイオンの変動が認められると、添加したペプチドが受容体のリガンドであること示すことができることは既知である。また、対照実験として、SP受容体を発現させた細胞でも、同様の実験を行った。その結果、HK-1特異的な受容体を発現させた細胞へSPを添加させた後の細胞内カルシウムイオンの変動よりも、HK-1を添加させた方が、細胞内のカルシウムイオンの変動が顕著に確認された。他方、SP受容体発現細胞では、SPを添加した時に得られた細胞内カルシウムイオンの変動がHK-1より顕著であった。これらの結果より、HK-1特異的な受容体のリガンドはHK-1であることが明らかとなった。
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Archives of Oral Biology
巻: 79 ページ: 62-69
http://dx.doi.org/10.1016/j.archoralbio.2017.03.004