ボツリヌス毒素は臨床において多く用いられており、その作用として関節の拘縮や筋強直に対する作用などがあるが、1994年にScottによってボツリヌス毒素が斜視の治療に始めて応用されるや,世界各国でジストニア等の治療薬として使 用されるようになった。最近の臨床報告によると、運動神経系に対する作用のみでなく感覚神経系に対する作用、特に慢性疼痛の鎮痛作用を有することが報告され、慢性疼痛の鎮痛薬としての役割が注目されている。しかし、その鎮痛作用が末梢神経系に対するものか、中枢神経系に対する作用であるかは未だ明らかではない。作用機序を明確にするために、 従来のBOTOXと新規に開発したA2NTXを投与した7日後のラットから後根付き神経節標本を作成し細胞内記録を行った。その結果、AδおよびC線維の伝導速度が緩徐化されている事が見いだした。また、慢性炎症モデルラット(CFA投与)を用いて、BOTOX又はA2NTXの中枢神経系に対する効果の検討した。 (また、c-fosの場合CFA炎症モデルラットが生理食塩水注入群より増加し、その増加はBOTOX又はA2NTX投与群では抑制された。CFAによる浮腫の程度に対しても検討したが、BOTOXとA2NTXともに無効であった。これらのことから、A型ボツリヌス毒素は末梢での抗炎症作用はなく、中枢での抗侵害作用のみを有しており,それはAδおよびC神経線維に作用した可能性が示唆された。
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