研究課題/領域番号 |
26860391
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
秋元 望 生理学研究所, 生体情報研究系, 特別協力研究員 (60723905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 排尿 / 神経障害性疼痛 / サイトカイン / ケモカイン / 脊髄 |
研究実績の概要 |
本研究では、神経障害性疼痛に伴うサイトカインが、その他の機能、特に内臓の自律神経制御に与える影響を調べるため、生理的条件下に内臓制御機構をシナプスレベルで解析するin vivo パッチクランプ法を用い、疼痛と自律神経系変調の中枢性の関連を明確にすることを目的としている。 平成26 年度は、「サイトカインによる中枢シナプス伝達機構への影響」をin vivoモデルを使って、脊髄-膀胱の連関を確認することを主に行った。神経障害性疼痛発現に関与していると報告されているサイトカイン、IL-1βおよびTNF-α、また申請者がこれまで注目してきたCCL-1を脊髄灌流投与し、その時の膀胱内圧測定を行った。IL-1βおよびCCL-1は脊髄灌流投与によって排尿間隔が減少する、つまり頻尿となることが観察された。一方で、TNF-αの脊髄灌流投与では、排尿間隔が広がる傾向にあることが示唆された。また、膀胱内圧測定と脊髄細胞外記録を同時に行い記録したところ、発火パターンの違いにより、排尿に関連した細胞が脊髄後角に2種類(1 排尿に伴う排尿内圧上昇時から発火を始めるもの、2 尿道の開口に同期して発火が開始されるもの)いることがわかった。また、in vivoパッチクランプ法と膀胱内圧同時測定も開発し、排尿に伴い活性化される細胞や、抑制される細胞が確認された。これらの結果から、これらの複数の種類の神経細胞にサイトカインが作用し、排尿に影響を与えていることが平成26年度の研究から示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は技術的に難しいin vivoパッチクランプと膀胱内圧測定の同時記録を開発し、排尿-中枢連関の解明を進めてきた。坐骨神経障害モデル動物を用いた検討がまだ十分ではないが、平成27年度に解析を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度はまず、平成26年度に十分にできなかった坐骨神経損傷モデルを用い坐骨神経障害由来のサイトカインが膀胱から脊髄への感覚入力に与える影響について検討する。また、サイトカインの阻害剤を用いた薬理学的検討により、坐骨神経障害モデルにおける副交感神経節前ニューロン活動記録と膀胱内圧測定を行い、サイトカインの自律神経系の制御への影響を確認する。これらの検討はin vivoパッチクランプ法によって、神経発火、シグナル伝達だけでなく、パッチクランプ時に神経トレーサーを同時に細胞内に投与することで、神経活動を記録した細胞の形態および投射部位も同時に確認し、膀胱-脊髄の神経伝達応答の連関を総合的に検討し、また疼痛と自律神経系の変調の中枢性の連関も明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、消耗品・旅費の支出が抑えられたこともあり、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、実験に使用する試薬費また、論文の投稿料などに使用する予定である。
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