研究課題
本研究では、神経障害性疼痛発現時にみられるサイトカインが内臓の自律神経制御に与える影響を調べることを目的としている。平成26年度は、in vivo モデルを使用し、脊髄―膀胱の関連を確認することを主に行ってきた。これまで神経障害性疼痛との関わりが報告されているIL-1 beta、TNF-alpha、また申請者がこれまで注目してきたCCL-1を脊髄還流投与したところ、IL-1 beta、CCL-1は頻尿になる傾向があり、またTNF-alphaは排尿間隔が広がる傾向があることが示唆された。また、膀胱内圧と脊髄細胞外記録を同時に行ったところ、脊髄後角には排尿に関連した2(Type 1:尿道の開口に同期して発火が開始されるもの、Type 2:排尿に伴う排尿内圧上昇から発火を始めるもの)種類の細胞が存在することが確認された。平成27年度は、さらに内臓からの痛みの中枢への伝達について検討を行った。平成26年度に特定した2種類の細胞の中でも、Type 1は下部尿路をカプサイシンで刺激したところ活動電位の顕著な発火の増加が観察されたことから、痛みを伝達するc線維の伝達入力を受ける細胞であることがわかった。特にこの細胞は尿道の電気刺激でも発火が観察されることから、尿道からの入力を受ける細胞であることが示唆された。しかしType 2では、カプサイシンの刺激ではあまり変化が観察されなかった。また、in vivo パッチにて脊髄後角から排尿に関連した細胞を記録したところ、排尿に伴い活性化される細胞や抑制される細胞がいることが確認された。これらの結果から、下部尿路から脊髄へ入力された圧変化や知覚の情報は複数の種類の細胞に伝達され、これらの細胞にサイトカインが作用し、排尿に影響を与えていることがこれまでの研究によって示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
The Journal of Physiology
巻: 594 ページ: 印刷中
10.1113/JP272073