乳がん検診には,現在マンモグラフィがスタンダードとされているが,近年超音波検査併用の有用性が証明されてきている.特に日本人女性は一般的に乳腺濃度が高い傾向にあり,また罹患年齢も比較的低いため,実際に超音波検査が併用されている施設も多い.しかし,検査の併用により,診断医の負担が大きくなる.乳がんを早期に発見することは,その後の生活を豊かにするために非常に重要であり,検診率を高めるためにも医師の負担の軽減が望まれる.そこで,本研究は乳がんの画像診断の高精度化と高効率化を目指し,医師による医用画像読影を支援する画像解析システムの開発を目的とした.具体的にはマンモグラフィと超音波検査で見つかった病変の照合や,鑑別診断を支援する画像解析技術の開発を目指した. 過去2年では主に,データベースの構築や画像処理の基礎技術の開発を行った.本年度はマンモグラフィと超音波画像の両方を用いて読影した際に,それぞれ単独に読影した時とどう異なるか観察者実験を行い,基礎データを得た.そのデータを用いて参照画像検索を行い,単独検索,それぞれの平均値を用いた組み合わせ検索,更に一つのアルゴリズムで併用情報を用いた併用検索を比較した.また,深層学習技術を用いて,腫瘤の良悪性鑑別法の検討を行った. また,3次元超音波データベースを用いてマンモグラフィと照合させるための基礎研究を行った.3次元モデルの構築までには至らなかったが,3次元超音波画像より腫瘤を自動的に検出する技術の開発を行った.この結果は,マンモグラフィとの照合に利用できると考える.本研究で得られた成果は,今後さらに改良を行うことで,乳がんの画像読影支援に役立つと考える.
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