研究課題/領域番号 |
26860400
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 晶 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40708591)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 腫瘍検出 / 動体追尾 |
研究実績の概要 |
透視画像上の孤立性肺腫瘍の検出に必要となる、ディジタル再構成画像(DRR)の構築に着手した。実験用データとして、放射線治療計画装置上で仮想の腫瘍構造体を含むCTボリュームデータを作成し、DICOM-RTデータおよびDICOM-CTデータとして出力した。続いて、それらのDICOMデータを読み込み、さらに任意の方向・距離にX線源を置いた場合に、X線束がCTボリュームデータ内を減衰しつつ通過し、DRR画像を作成できるようにシミュレーションプログラムを開発した。各ボクセル内を通過する距離の算出はSiddonらの方法(RL Siddon, Med Phys 1985)を参考とした。 商用の放射線治療計画装置が作成するDRRと比較して、肉眼的には画質上の問題がないDRRが作成できることを確認した。さらに、放射線治療装置に搭載されているkV-X線の線源、フラットパネルディテクター(FPD)、治療台らの座標系を入力することで、実際の治療中に撮影される透視画像を模したDRRを作成できるよう、プログラムに改良を加えた。 先行研究にて用いていた匿名化された過去の実臨床症例の治療中透視画像およびCTボリュームデータを元に、実際にDRR作成を行った。DRR上の腫瘍をマニュアルで指定し、そこから算出した特徴量をもとに透視画像上での腫瘍検出を試みたところ、腫瘍視認性のよい角度などの条件を整えてやれば、ある程度の腫瘍検出ができることが確かめられた。一方で、視認性の悪い角度や、腫瘍ボリューム自体が小さい場合では、周囲解剖構造よりも低い特徴量となるために、腫瘍検出が困難であることが確認された。 平成26年度中は開発途中段階であり、定量的評価および学会発表などは未達成となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載したように、CTボリュームデータを用いDRR構築を行うシミュレーションプログラムを作成することができた。肉眼的には充分な画質のDRRを作成することができ、匿名化された臨床症例の透視画像である程度の腫瘍検出ができることも確認できたため、研究計画に記載していたような画質補正方法の検討は現時点では省くこととした。 視認性の悪い角度では検出精度が著しく低下することが示唆され、次年度(27年度)の研究計画に記載したような撮影角度などの探索が必要であると思われた。最適角度の探索法については確立されたものはないが、本研究ではDRR作成プログラムを改変することにより、X線束の減弱に関する、腫瘍と腫瘍以外の正常構造との各々の影響を計算することが可能となる。自作プログラムであるため改変も容易であり、26年度中にDICOM-RTデータの読み込みおよび腫瘍ボクセル内の通過距離や線減弱係数の取得をおこなうプログラム作成までほぼ完成しており、この点については当初の研究計画よりも順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最適撮影角度の探索について方法の確立および実施可能性を判断する。X線束の減弱に関する腫瘍および正常構造の寄与度合いが視認性に重要であるならば、寄与度を定量的に評価する方法や、視認性を向上させる基準・閾値を探索する。また、視認性だけでなく腫瘍の特徴量が低値である場合は、周囲の正常解剖構造と腫瘍位置との相関解析をすすめていき、より多くの場合に透視画像上での腫瘍検出および腫瘍追跡ができるよう、研究開発をすすめていく。 多量のDRR画像作成や網羅的探索などの計算量の多い作業が含まれるため、並列演算処理を導入したり、演算能力の高いコンピュータの購入したりするなどの対応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画時には平成26年度中に演算性能の高いタワー型PCを購入し、プログラム開発および演算に用いる予定であった。しかしながら計算アルゴリズムの工夫等により通常のPCにても許容範囲の処理速度が得られたため、タワー型PCの購入を延期することとし、物品等購入費が余ることとなった。また旅費に関しても情報収集や調査のために当初予定していた学会への参加を見合わせたため、残余が生じることとなった。学会不参加については他の業務等を優先する必要があったためであるが、研究開発の進捗に対しては問題無いと判断している。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年中にはタワー型PCの購入を見合わせたが、平成27年度には当初予想していたとおり、多量の演算が発生する研究内容が避けられないと考えられるため、並列演算機能を有する高性能タワー型PCの購入を予定する。情報収集に関する学会等も可能な限り当初の研究計画通りに参加できるよう努力することとする。
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