研究課題/領域番号 |
26860406
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
坂間 誠 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (80455386)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 線量測定 / カロリメータ / 粒子線治療 |
研究実績の概要 |
放射線治療では、治療成績を左右する最も重要な物理量である吸収線量を精度良く評価することが要求される。放射線治療の線量は電離箱内に生じた電離量に基づいた評価が行われているが、近年発展している粒子線治療や強度変調放射線治療に対する電離箱の線量測定に必要な物理量は精度良く求められておらず、線量の不確かさが大きくなっている。本研究では、治療用粒子線や複雑な照射法の放射線に対してグラファイトカロリメータによって高精度の絶対線量を測定し、電離箱線量測定に必要な物理量の推定や絶対線量測定法を確立し、高度化を行う。グラファイトカロリメータを用いて典型的な治療エネルギー炭素線において様々な深度での絶対線量測定を行った。カロリメータ測定と同様の測定状況下で各種電離箱を用いて線量測定を行い、カロリメータの結果との比較を行った。その後、水中において詳細に深部線量分布測定を行い、カロリメータによって得られるグラファイトに対する吸収線量を水吸収線量に変換する。求められた水吸収線量から、各種電離箱の校正定数やw 値、阻止能比、擾乱係数の検討を行う。このための測定やモンテカルロシミュレーションを別途行う。 実際の治療により近い状態でのカロリメータによる絶対線量測定を行い、治療状態での電離箱による吸収線量測定に必要な物理量を明らかにし、線量測定の高精度化を行う。各種エネルギー、SOBP 幅の治療用炭素線に対して治療の基準となる値であるSOBP 中心での高精度絶対線量を求めることで、線量分布の検証や各種電離箱の特性を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カロリメータによる線量測定は、比較的順調に進んでおり、実際の治療場により近い状態での測定を行っている。又、絶対線量の決定を行い、その線質における電離箱に対する各種物理量や校正定数を求めている。照射野の依存性や様々なサイズのSOBPビーム、より深い場所でのフラグメント粒子の電離箱の応答への影響等を調べていく。電離箱、X 線フィルム等で照射野の平坦度確認の測定を行い、グラファイトファントムと水ファントム中での深部線量分布を各種ビームに対して指頭形電離箱と平行平板形電離箱で測定する。 グラファイトカロリメータで求められた水吸収線量と電離箱によって求められた水吸収線量を比較、解析することで電離箱の水吸収線量校正定数やw 値等のパラメータを算出する。測定は、順調に進んでいることから、その測定結果の詳細な解析とシミュレーションによる検討が必要となる。
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今後の研究の推進方策 |
測定に対して、モンテカルロシミュレーションを行い、各種電離箱のw 値、阻止能比、擾乱係数の検討を行う。又、各種電離箱に対する特性評価や各補正のための測定を随時行う。その後、様々なエネルギーに対して各種SOBPの絶対線量測定を行い、治療用炭素線に対する線量測定の手法を高精度化し、確立させる。 モンテカルロシミュレーションの詳細なモデリングを行い、シミュレーションの妥当性を確認すると共に治療用炭素線の線質の評価を行う。又、測定の信頼性を確認するための再現性試験を行う。電離箱測定における各種物理量を系統的にまとめ、今後の測定の指標となるデータを構築していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の途中での移動により環境が変化したため、研究の進展が若干遅れた事と発表等に行く機会が限られた事により、若干の次年度使用額が発生した。又、費用を効率よく使用するためには、ある程度まとまった額が必要になるため、残額を単独で使用するよりも翌年度分と合わせて使用することが有効であるため。
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次年度使用額の使用計画 |
カロリメータ測定の構造上の各種詳細な補正のためと水とグラファイトの吸収線量を変換するための電離箱線量測定用ファントムと測定用電離箱が必要となる。これらを用いて実際の治療条件を含んだより複雑な条件での測定を行い、各種電離箱のw値、阻止能比、擾乱係数の検討を行う。又、国外と国内の医学物理関連の学会に参加するための旅費を予定している。
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