治療条件であるSOBP炭素線では深さ方向に炭素線を広げた分布を作成するために、SOBP中心では様々なエネルギーの炭素線やフラグメント反応によって生成された様々なフラグメント粒子が混在する。各種エネルギー、SOBP幅の重粒子線に対して電離箱線量測定に必要な物理量である空気に対するw値や空気と水の阻止能比、電離箱の擾乱係数などを求めるために、カロリメータ測定を行った。カロリメータによる高精度な絶対線量測定により、現在の線量測定プロトコルに従って算出した線量は、約3%程度過小評価する結果となった。この原因は、主に炭素線における空気に対するw値と阻止能比の影響によるものであり、これらの値は使用する物質の平均励起ポテンシャルに大きく依存することから、平均励起ポテンシャルの線質補正係数への影響を評価した。又、水中での詳細な電離箱測定により、各種電離箱の擾乱補正係数の実験的評価を行った。重粒子線に対しては、平行平板形電離箱の擾乱補正係数の影響は小さく、各電離箱間の個体差の影響も小さい結果となった。これらの結果により、吸収線量測定の高精度化とその不確かさの評価を行った。得られた線量や不確かさから、治療条件での位置決めとレンジ計算による誤差の相関関係を考慮した治療計画に対するロバストネスの高速な評価方法を開発した。簡便な近似計算法により、想定される様々なシナリオの線量分布を高速に計算でき、線量の不確かさに対する分割効果の影響について簡便かつ高速に評価することが可能となった。このロバストネス解析法により炭素線治療の臨床ルーチンにおいて短い計算時間で効率的なロバストネス評価が可能となる.
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