日本国内において心疾患による死亡者数は2位であり、年々増加傾向にある。近年では心臓の血管を検査するために心臓CT検査が普及し始めているが、心臓CT検査では治療はできない。冠動脈疾患の治療にはカテーテルを用いるため、冠動脈造影が必須である。血管だけを画像化する方法として造影剤注入前後の画像の引き算により血管以外の陰影を削除するDSA(Digital Subtraction Angiography)法がある。しかし、冠動脈造影においては、心臓や呼吸によるアーチファクトが多く生じるため、現在あまり利用されていない。通常のX線透視像に比較して血管が明瞭に描出できるDSAが冠動脈造影で実現できれば、従来に比べてさらに少量の造影剤で詳細な血流分布および血管分布などが観察可能となり、診断精度の向上や冠動脈に起因する疾患の新たな病態解明等に寄与することが期待できる。また、近年、機械学習の方法論が進歩しコンピュータの性能の向上により、高い性能を発揮することがわかってきた。そこで、本研究では機械学習を用いて冠動脈造影におけるDSA法開発の実現可能性を検討することを目的とした。 データセットは冠動脈造影画像から血管領域と、その他の領域を作成した。続いて教師データを造影後のROIとし、造影後のROIを入力データとして、出力画像が血管のないマスク画像となるようにニューラルネットワークを用いて学習を行った。 多くの症例において良好な結果が得られた。また本手法は動きの大きい症例に有効であることが確認された。しかし、動きの少ない場合に従来DSA法では生じない骨の輪郭がアーチファクトとして現れた。機械学習が冠動脈DSAに有効であることが示唆された。
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